第5話それを言っちゃあおしまいだよ
それを言っちゃあおしまいだよ
「あのさぁ。この辺で火事なんかないよね。実はトイレに行きたいんやけど、さっきからずっと窓の外に、顔の半分が焼けただれた中年の男の人が、部屋の中を覗いてて気になってたのね。たぶん害を与える感じじゃないから、大丈夫やと思うけど…」
川に面した大きな窓を指差し、そう言うのです。
その言葉で、その場にいた全員の気持ちがすっと一つにまとまったような感じがしました。
あゆむも、
「そう、ちょっとニャって笑ったりして不気味やけど、ずっと中を見ているだけで入ってけぇへんから、大丈夫なんちゃうか」
大丈夫という言葉でその場を収めようとしても、もうみんなの関心は窓の外に集中してしまっています。
それで道が出来てしまったのかもしれません。
いや、作らされてしまったのかもしれません。
そして、それは中に入ってきてしまいました。
あゆむの横にいた、あゆむの女子高からの友達、ユウに取り付こうとし始めていたのです。
ユウも見えないけど見えてる位わかる霊感の持ち主です。
「もうあかんわ。ちょっと外に出ようか」
あゆむが言うと、
「うん、もう限界や」
と、ユウも言い、2人で外へ出て行きました。
これがきっかけで、幸い一旦休憩が入りました。
トイレに行ったり外に出たり、一旦空気と気持ちの入れ替えが出来たように思います。
それもあゆむたちの狙いだったのかはわかりませんが、この時あゆむたちは、話題の焼けた中年男を、バンガロウから離れた所に”捨ててきた”のだそうです。
戻ってきたあゆむは、念のためと、塩と水をバンガロウの部屋の中央に置きました。
一旦は空気と気持ちの入れ替えが出来ました。
でも、そんな事で全員の気持ちの方向転換は出来るわけもありません。
この時まで、霊感なんかまったく反応しなかったメンバーの興味は消えることはなく、話はさっき居た者へと引き戻されていきました。
そう、あゆむに、
「もどって来るかもしれない」
と、言われていたのにも関わらずです。
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