第4話それは後々効いてくる

それは後々効いてくる




 とうとう、幽霊の姿が見え始めました。


 二階から、階段のない天井から、見えない階段をを降りてくる、オーバーオールを着た、胸から下が見えています。半透明な女の人の足、階段を降りる足の動きがはっきりと見えています。


 それは胸の辺りまで見えると、照明の下で、電気の明るさにまぎれるように消えました。


 私が居たのは、バンガローの出入り口です。

 広場側の壁に背を向けて、ドアのすぐ左横に居ました。

 バイクレーサーの友人は小さな土間(玄関)を挟んで右隣に居ます。

 ちょうど2人で出入り口の両脇を固める形に座っていました。


 その出入り口の土間に降りる一歩手前に、さっきのオーバーオールの女の人が立ち、今度はじっと私を見下ろしている感じがするのです。

 わかるけど、今度は姿は見えません。


 たとえ霊感がなくても、そこに人が立っているとすれば、目的は「外に出たい」です。


 土間にはみんなの靴が沢山並んでいます。


 女の人が立っている場所の、女の人の目がある所を見ながら、

「外に出たいのならドアを開けてあげるけど、外に出たくてそこに立ち、私を見ているんですか? そうなら私が今から見る靴ひもを、右に動かしてみてください」

と、声には出さずに伝え、そっと靴ひもを見降しました。


 本当は、見えない事を拠り所に、動かないことをタテにとって、思い過ごしだとしたかったのです。


 ですが、靴ひもはすぐに右に動いてしまいました。少なくとも右に動いたように見えました。


 蝶結びにしてある、輪になっていない方の靴ひもが、

滑り落ちるように、

私の質問に彼女が答えるように、

すっと右に動いてしまったのです。


 たとえ偶然でも約束は約束です。


 私は「外の雨は止んだのかな」などと言いながら、ひと一人通れるだけドアを空けました。

 すると風が抜けるように、すっと何かが外へと出て行きました。


 向かいに座っていたあゆむには、私が女の人を外に出している様子が、はっきりと見えていたそうです。


 私一人がこの状態ではありません。

 あちらこちらで対応を迫られている人の姿が見えます。


 元々霊感があると言っていた、ぴよぴよのボーカルのちあきさんや、あゆむだけでなく、この場の気に当てられたにわか霊感師は、しばらく前からずっとこの調子です。


 私は、頼まれごとをしただけでしたが、取り憑かれそうになっている人が居たり、障りの出ている人までいたそうです。

 霊障の痛みを和らげるヒーリングに目覚めたまみ姉は、その左手で、痛みを払って回っていました。



 そんな中、とうとう良くないきっかけを作ってしまいました。



 ちあきさんが、この場の、今起こっていることを話し始めてしまったのです。

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