2ー2
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「こちらも攻めましょう!」
そう言うと、アルテミスは手にしたライフルを叢雲たちに向けながら走り出す。
「来るよ、叢雲ちゃん!」
「ヴェルグ、迎撃して!」
「言われなくても分かってるわよ!」
「了解。迎撃行動へ移行」
マスターである美空の指示通り、フレイスヴェルグはライフルでアルテミスの進路を邪魔するように銃撃していく。叢雲もさらにもう一発バズーカを撃つとその場に投げ捨てて大剣へと装備を変える。
「それではダメージにはなりません!」
対するアルテミスは自慢の装甲で銃撃を受け止めていく。頑丈そうな装甲は見た目通りの防御力を発揮し、アルテミスの進撃を助けていた。
そして手にしたライフルの引き金を引くと、一条の光が放射される。
「何?! ビーム?! 叢雲ちゃん避けて!」
「ヴェルグ、合図と同時に離れて! 私が返り討ちにしてやるわ!」
叢雲は吹雪の指示を聞かず、その場にしゃがみ込みつつ大剣を盾代わりにしてビームをやり過ごす。そして再び大剣を構え直し、アルテミスの動きを見定める。
「……! ヴェルグ、叢雲さんの言うとおり一旦距離を取って。それからコンテナオープン」
「了解。ヴェルグちゃんはマスターの指示に従う」
ライフルでの牽制射撃を止めて、その場から離れるフレイスヴェルグ。アルテミスはそんな彼女をチラリと見やるが、敢えて叢雲へと突進し続ける。
「いきますよ、叢雲さん! 勝負ですっ!」
「望む所よ!」
ビームライフルを持ったままアルテミスは跳躍しながら、もう片方の手に握っている実体剣を振りかぶる。叢雲も自身の大剣を斜め後ろに構えると、そのまま一気に振り抜いた。
――――ガキィン!
激しい火花を散らしてアルテミスと叢雲はぶつかり合った。上方から自身の重量とスピードを乗せたアルテミス、それを下方から受け止めつつ押し返す叢雲。互いの一撃は拮抗している。
「あんた、やるじゃない!」
「叢雲さんこそっ!」
クルリと一回転しながら着地したアルテミスはとっさにビームライフルを撃ち込む。しかし、それを見越していたのか叢雲は既に回避行動に移っていた。
「アルテミス?
「? ……ああ、そういうことですねっ!」
「私との戦闘中にお喋りだなんて、随分と余裕見せてくれるじゃない!」
鋭い突きを繰り出す叢雲。その一撃を片手剣で巧みに逸らしたアルテミスは、何故か上空へとビームライフルを撃つ。
「何を?!」
「叢雲ちゃん、一度下がって!」
吹雪の指示よりも先に叢雲は大きく後方へと跳躍する。その直後に辺り一帯が煙のようなもので覆われてしまった。
「予めミサイルコンテナの一つに煙幕弾を仕込んどいて正解でした」
「流石はマスター。優秀」
先程アルテミスが空に向かってビームを放ったのは、フレイスヴェルグが発射したミサイルを撃ち抜く為だった。しかし迎撃したかに見えたその弾頭は煙幕で、アルテミスの視界を塞ぐ事が本来の目的だったのだ。
「煙幕とは……考えましたね!」
「油断しちゃ駄目って言ったでしょ〜アルテミス。まずは煙を吹き飛ばしちゃいましょう?」
「
真っ白な煙、そこへフレイスヴェルグはライフル銃を連射し、叢雲は再び大剣を担いで煙幕の中心にいるであろうアルテミスへと斬りかかった。
「……ダメっ! 叢雲ちゃん引き返して!」
「遅い! 今更止まれないわっ!」
果敢にも煙幕へ飛び込んだ叢雲だったが、次の瞬間に激しい爆風に圧し返されてしまった。
「叢雲ちゃん!」
「くっ……何が起きたの?」
煙幕がたちどころに晴れていき、アルテミスの姿が見えてくる。その場は小さな爆発でも起きたのか、草や地面が少しばかり吹き飛んでいた。
「吹雪さん、きっとアルテミスは自分の足元に小型ミサイルを撃ち込んだんです。その爆発で煙幕を……!」
「ええっ?! でもそんなことしたら、アルテミスちゃんもダメージがあるんじゃないの?!」
「あらあら、アルテミスの装甲を甘くみないでほしいわね〜? あれくらいなら数発直撃してもダメージにはならないわ〜」
「そうです! 真理の作った装甲は頑丈なんですっ!」
確かにいくらか爆風で黒く煤けたように見えるが、アルテミスの動きに支障はないようだ。見た目通りの重装甲は伊達ではないらしい。
「流石は真理センパイとアルテミスちゃん! 強い……!」
「あんた、呑気に敵を褒めてどうすんのよ?! 何か勝つ目はあるの?!」
小規模かつ直撃ではないとはいえミサイルの爆風を受けてしまい、吹雪から見えるディスプレイのステータス上では少しばかりHPが減ってしまった叢雲。意外と手強いアルテミスに焦りを感じているのかもしれない。
「……叢雲ちゃん、私の指示どおりに動いてくれる?」
「……ッ! 癪だけど、それで本当に勝てるのならね!」
「よっし、それなら! 美空とヴェルグちゃんも聞いて……ゴニョゴニョ」
吹雪は自分が思いついた作戦を三人に小声で伝える。その内容に、美空は思わず目を瞠ってしまった。
「吹雪さん、本当に初心者……?」
「あらあら、作戦会議かしら?」
「いいですよ、私と真理のコンビネーションを打ち破れるか試してみましょうっ!」
作戦内容を把握した叢雲とフレイスヴェルグは改めて戦闘態勢へと移る。その後方ではマスターである吹雪と美空が固唾を飲んで見守っていた。
「ふん、その自信満々な表情が崩れるのが楽しみだわ!」
「叢雲、まずはヴェルグちゃんが仕掛る!」
機敏な動きでフレイスヴェルグが動いた。持ち前の身軽さを活かし、一気にアルテミスへと接近する。
「攻撃してこない……?」
アルテミスは咄嗟に防御姿勢を取るが、肝心のフレイスヴェルグは一向に攻撃してこない。それどころか、彼女はアルテミスの周囲を大きく走り回っていた。
「気をつけてアルテミス!
第三者の視点から見える真理は、フレイスヴェルグが何をしようとしているのか気付く。ただ、走り回っているだけではなく、その周回上には彼女のミサイルコンテナがいくつか落ちていた。いや、
「もう手遅れ。ミサイル遠隔発射」
フレイスヴェルグが装備していたミサイルコンテナはドールからの無線で操作が可能だった。それをアルテミスを中心にした円周上に配置し、一斉射することで回避を困難にしたのだ。
「考えましたね! でもその程度のミサイル、避けるまでもありません!」
迫りくる無数のミサイル、しかしアルテミスは両腕を目の前で交差させて防御姿勢に入る。たしかに、彼女の装甲は見た目よりも硬く生半可な攻撃ではびくともしないのは先ほどの煙幕晴らしの自爆でも実証済みだった。
ほとんど同時に着弾したミサイル群。かなり派手な爆発がフィールドを小さく振動させたが……やはり、アルテミスにはあまりダメージが無いようだった。
「ケホッケホッ……煙幕弾も混じってる……?」
「……! そういう事ね、吹雪ちゃん〜? アルテミス、叢雲ちゃんが来るわよ!」
やはり真理には見破られてしまったのか。吹雪の考えた作戦とはつまり、フレイスヴェルグのミサイルでアルテミスの気を逸らし、その隙を狙って叢雲を突撃させるというものだった。アルテミスの防御力を考えれば、フレイスヴェルグの武装ではなかなか有効打が狙えず、かといって真理の指示の前では叢雲単機で勝てる見込みもない。
「やっぱり真理センパイにはお見通し……?!」
「でも、やるしかありません!」
吹雪と美空はもう祈るしかない。あとは、叢雲の一撃に賭けるしか。
「ふん、この私を誰だと思ってるの?」
そう小さく呟いた叢雲は既に駆け出していた。大剣を携え、長い銀髪が尾のように流れていくその姿はどこか優雅で、繊細な絵画を思わせるようだった。
「勝負です、叢雲さん!」
「いいわ、覚悟なさい!」
ビームライフルをその場に捨て、実体剣を両手で構えるアルテミス。
大剣を後方に構え、突撃のスピードを乗せた一撃を狙う叢雲。そしてそれを迎え撃つアルテミス。
固唾を呑むそれぞれのマスター達。彼女らに出来ることは基本的にドールへの指示のみ。後はもう、自身の相棒を信じるしかないのた。
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