名付け大明神

「大明神様、大明神様ー!」


「うむ、我こそが、名付け、あ名付け大明神であるぞぉお」


「大明神様今日も天界に新たな命が生まれましたので、その者たちの名前を頂戴したく参りました」


「うむ」


「では早速一人目、よろしくお願いいたします」


「うむ。ええい! 命名『コシノイタミ』ィィィ……」


「承服しかねまするぅぅぅ」


「……え、駄目? 駄目かな?」


「いや、駄目ですよ、分かるでしょ、なんですかコシノイタミって。そんな名前嫌でしょ。何? 腰痛いんですか?」


「まあ、あの、その、腰が痛いと大変じゃん。だから腰の痛みに強くなって欲しいなって思って」


「だとしたら肝心な部分が抜けちゃってるじゃないですか。強くなって欲しいって言うか痛みそのものになっちゃってるじゃないですか」


「そっか」


「やり直してください」


「うん」


「いいですか?」


「うん」


「では一人目よろしくお願いいたします」


「うむ。ええい! 命名『カタヒザモモ』ォォォ……」


「承服しかねまするぅぅぅ」


「……駄目かな?」


「駄目です。え? これなんですか? 肩、膝、腿? 痛い部分ですか? て言うか腿も痛いんですか?」


「うん、なんか、腰を庇ってるのかな、妙に力入っちゃって、筋肉痛と言うか引き攣ってる感じ?」


「悲惨ですね」


「そうなんだよね。だからそこが強い子になって欲しいなって」


「なるほど。でも駄目です。また同じ失敗してるんですよ。やっぱり肝心な部分が抜けちゃって、体の部位そのものになっちゃってるんですよ。やり直してください」


「うん」


「では一人目よろしくお願いいたします」


「うむ。ええい! 命名『ヘンズツウツヨミ』ィィィ……」


「承服しかねまするぅぅぅ」


「……駄目? 今度は片頭痛に強い子になって欲しいって思ったんだけど」


「いやいやいや、どちらかって言うとこれだと片頭痛が強い子になっちゃってませんか? そう聞こえましたよ。大体嫌でしょヘンズツウツヨミなんて。自己紹介でこの名前言われたら、あれ? この子、片頭痛強い子なのかなって思うし、変に気を使われますよ。なんて言うか願いが裏返っちゃってるんですよ。あのですね、いいですか、あんまり変な名前だと結局あとで改名大明神様のところに行かなくちゃいけなくなって二度手間になるんです。大体この間も、なんですか『ナポリタンタベオ』って。改名大明神様笑ってましたよ。ナポリタン食べる子になってほしかったんですか? どう言うことですか? てかナポリタン食べたかっただけでしょあんた」


「ごめん」


「欲求を抑えて」


「うん」


「ピンポイント過ぎる願いも入れない」


「うん」


「いいですか、ちゃんとやってくださいよ」


「うん」


「では一人目よろしくお願いいたします」


「うむ。ええい! 命名『コワバルセナカ』ァァァ……」


「承服しかねまするぅぅぅ」


「駄目か」


「駄目でしょ。もう名前感もなくなっちゃってるし。やり直し」


「うん」


「では一人目よろしくお願いいたします」


「うむ。ええい! 命名『モウシゴトヤメテオンセンニイキタイ』ィィィ」


「承服しかまするぅぅぅ。完全にあんたの願望じゃねえか! やり直し!」


「うん」




 そんな神々の仕事風景。

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