恋に落ちるとは

シヨゥ

第1話

 異性に出会って、恋に落ち、結婚にいたる。それがむずかしい。

 異性に出会うことまでは簡単だろう。道端を歩いていれば人と出会える。その人間のおおよそ半数は異性なのだから出会うことは簡単だ。ただこれでは出会うというよりは視界に入るが正しいような気がする。


 ではどうやって恋に落ちるのだろうか。ここからが不明確だ。

 一目惚れがいちばん恋に落ちる具体的な例だろう。ただ一目惚れるための方法が謎だ。

 これまで見てきた異性の顔から一番好みの顔を作り出して脳が保存しているのだろうか。

 それとも遺伝子に刻まれた本能的ななにかがあるのだろうか。

 それともあまりにも恋に縁遠すぎてただ勘違いしているだけなのだろうか。

 絶対になにか条件づけられたものに合致したからこそ一目惚れるのだとは思うが。そしてそれがこそが恋に落ちることなのだと思うが。一切は謎のままである。


 恋に落ちてから結婚にいたる過程についてはもはや手に負えない。その理由を尋ねてみると十人十色の答えが出てくる。これはきっと男女の組み合わせの数だけ答えがあるのだろう。だからぼくがぼくの答えを得るにはまず恋に落ちないといけない。

 そんな思いからこうして身なりを整えて外に出ている。はや数時間が経過した。何人もの女性とすれ違っている。だが恋に落ちたと思える出会いはひとつもなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恋に落ちるとは シヨゥ @Shiyoxu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る