第2話

それから俺は2人のあとを忍者のごとく尾行した。


周りの生徒からは奇怪な目で見られ、すれ違う先生からは心配されたりもした。


それでも俺はくじけなかった。


意地でもあの2人の関係性を知りたかったからだ!!




そんな時、2階から1年生たちの教室がある1階に降りたときイレギュラーが発生した。




「おばちゃん!!俺焼きそばパン!!」




「俺、サンドイッチ!!」




「私、クリームパン!!」




「ちょっと!どいてよ!」




「あんたこそ邪魔!!」




それはこの学園名物のうちの1つといっても過言ではない腹をすかした飢えに満ちたものたちの戦い。


午後の授業を乗り切るためにはこの戦いに勝つしかない。




そう。


これこそが購買戦争。




実はこの学園は県屈指のマンモス校なのだ。


一学年、40人のクラスが15組存在している。


要するに高校三学年合わせて、1800人の規模を持つ超巨大な学園。


そのため毎日購買では殺し合いかと思うほどの食い意地を張ったある意味フードファイトが繰り広げられているのだ。


毎日弁当の弁当勢こと俺からすれば、気の毒でならない。


お母さん毎日ありがとう。




さて、やっとこの状況を説明し終えたところで証明されたことがある。


では何が証明されたのか。


答えは簡単。


購買戦争時の津波レベルの人波に流されてあっという間に2人を見失ったわけだ。


気づいた時には人波からはじき出されていた。




「いたた・・・。購買戦争の名称は伊達じゃないってか・・・」




俺はブレザーについたほこりをはたきながら立ち上がる。




「さーて。案の定、見失ってしまったわけだけどどうするかな・・・」




このまま諦めて教室に戻るか。


それとも諦めずに手がかり無しで闇雲に2人を探すか。




「うーん。どうしよ・・・」




正直このまま戻ってしまった方が圧倒的に楽い。


闇雲に校舎内全部探したところで無駄足になる可能性の方が圧倒的に高いのだ。


教室に戻って、奏斗とだべった方が楽しいだろう。


でもこのまま戻るのも不完全燃焼でなんか嫌だ・・・。


さてどうするか。




それから30秒ほど考えて結論を出した。




「今からこの中の一人の生徒に情報収集をして手がかりが手に入ったら探す。手に入らなかったら戻る。よしこれでいこう」




俺はそう決めると早速行動を開始した。


俺と同じく人波からはじき出された生徒の中の眼鏡をかけた男子生徒に話しかける。




「ねぇ、小田倉と中野さん見なかった?」




「ん?あの2人なら旧校舎のほうに歩いて行ってたよ」




「そっか。ありがとう」




なるほど。


旧校舎か。


確かに密会をするにはうってつけの場所だ。




さっきも説明したけどこの学校はかなりのマンモス校だ。


でもマンモス校になったのはつい五年前のことらしい。


五年前に理事長が変わり、その人がどうも変革家だったらしく校則や制服のデザインを一新。


するとその改革が人気をよび受験者が殺到。


あまりの人気に合格者人数の引き上げを行った結果今に至るそうだ。




その際に校舎も一新。


たくさんの生徒を受けいられるようにかなり広い校舎を建てた。


その新校舎が今の俺の現在地。




そして旧校舎は新校舎よりもかなりちいさく新校舎の西側に建っている。


今では告白スポットとかきもだめしなどに使われている。




「さて、旧校舎に行ったあとは戻りますか。吉と出るか凶とでるか・・・・」




俺は旧校舎へと足を進めた。














旧校舎は電気が通ってないため太陽の光が差し込んでいて多少は明るいといってもそれでも暗いの部類に入る。


そのため幽霊などが出そうで妙に気味が悪い。




「こわぁ~。さっさと帰ろう。1階だけで十分だろ」




怖いのと時間が無くなるため1階だけ見回って引き戻ることにした。




薄暗く先の長い廊下を1人で歩く。


小学生の時したきもだめしを思い出した。




廊下には俺の歩く足音だけが響く。




「旧校舎とか早く取り壊せばいいのに。あれ?取り壊しの予定あったっけ?なんか先生が言ってたような・・・」




今まで何かと先伸ばしてきた旧校舎の取り壊しだが、今月中に行うことになったらしい。


とか言ってたような・・・・・・。




そんなことを考えていたらもう少しで1階の突き当りの教室。


すなわち最後の教室にたどり着こうとしていた。




「なぁーんだ。結局、いなかったじゃんよ。さっさと確認して帰ろ」




完璧に気が抜けた。


その矢先のことだ。




その教室内からなにか規則正しい張りのある音がしてくる。


パンパンパン・・・・・・?


それに加えなにやら人の声も聞こえてくる。


この距離だとまだ正しく聞き取れない。




俺は息をひそめて近づいてみることにした。




音をたてないように教室の扉の前に立つ。




すると中から艶やかな女子の声が聞こえてきた。




「あっ・・・んっ・・・そこっ・・・いいっ!」




それに加えパンパンパンというリズムのいい音。


俺の脳はこの状況を0.01秒の速さで処理した。




導き出した方程式は一つ。




現在チョメチョメの真っ最中。


発情ウサギモード。




オーマイゴッド。


アーメン。


ならぬザー〇ン。




俺はなんという場面に出くわしてしまったんだ。


2人を探しに来たらまさかの教室プレイに遭遇。


誰がこんなこと想像できただろうか。


いや、できない。




はっ!!思わず反語なんてものを使ってしまった。




このままでは危ない。


ここにいたら嫉妬のあまり、乱入してめちゃくちゃ禁止用語を連発してしまいそうなのでおいとまさせていただきます。


ドロン。




でも、そのまま教室に戻ろうとしたときある言葉が耳に入った。




「デュフフ!!ギャルさいこー。締り具合さいこうですな。催眠さまさまですわwwww」




は???


ん???




ごめん。なんて言ったこの男??


催眠??


は??




俺はこいつが何を言ってるのか分からなかった。


聞こえていたはずなのに脳がその言葉を拒否した。


そこに追い打ちをかけるかのように男が独り言をつぶやく。




「まさか僕がこんな力を使えるなんて。おぉここがユートピアか。っととイクっ!!」




確定。


この男催眠なんてものを使ってチョメってます。


純愛なんてものとは程遠いです。




その事実が分かるとさっきまでのふざけていた気持ちが一気に冷める。


代わりに湧き上がってきたのは果てしないほどの憤怒。


マグマのように吹き上がる怒り。




突然だがみんなはエ〇マンガやエ〇動画を見たことがあるだろうか?


俺はある。


がっつり見て自家発電に勤しんでる。


そういうお年頃なのだ。


健全ともいえる。




人外、幼馴染、ケモミミ、人妻なんでもござれ。


そんな俺だがその中で唯一見ないジャンルがある。


それは催眠物やレイプ物だ。


昔少しの好奇心に釣られ覗いてみたら吐き気を催した。


正直あんな物のどこがいいのか理解できない。


結局得をするのは男だけじゃないか。


被害を受ける女性があまりに可哀そうだ。


俺は純愛のセッ〇スしか認めない。


めんどくさいとでもなんとでも言うがいい。


それでも俺は愛のない合体は認めないと言い続ける。




とにかく何が言いたいかというと俺はこの男を絶対に許さないということだ。


いや、訂正しよう俺は小田倉を許さない。


さすがに結構な声量で盛っていたら誰なのか分かる。


多分、小田倉は5人の女子を毎日ローテーションで回しながらヤッているのだ。


それも催眠を使って。


そうなると5人が小田倉に引っ付くようになったのも催眠の効果だと考えてもよさそうだ。


マジで許さん。


ガチで許さん。


こいつばかりは絶対に破滅に追い込んでやる。


絶対に5人を救って見せる。




お前の幻想をぶち壊してやるよ小田倉。




そうと決まればまずはこの状況をどうにかする必要がある。




俺はポケットに入っていたスマホを取り出し、証拠として数十秒ほど声を録音する。


かなり心苦しいが。




そして俺はそのままスマホで動画アプリを開きチャイムの音を検索。


それを音量マックスにして流す。




『キーンコーンカーンコーン』




このチャイムの音のあとピタッと声は止み、そのあとはバタバタと慌てるような音がする。




そのまま俺も走って旧校舎を後にする。


うまく授業開始5分前のチャイムだと勘違いしてくれたようだ。


あの様子だとすぐに教室に戻ってくるだろう。


まだ授業が始まらないと知ってもチャイムはただの放送ミスだと思うだろう。


あそこで俺が変に止めに入っていたら中野1人は救えただろうが、そうなると小田倉の警戒心が底上げされる。


俺は誰か1人を救うんじゃない。


5人全員救うんだ。


下手な行動はできない。


慎重に動かなければ。




あとは協力者が必要だ。


まぁあてはある。




そうと決まればさっそく今日の放課後は作戦会議だ。


覚悟してろよ小田倉。

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