第18話 アリバイ
菅田は美緒が怪我をした時の本館の防犯カメラを見ていた。三島が以前見た物とは違う、別のカメラが捉えた映像だ。
美緒は誰かを庇っている、それが誰なのか知ることで今回の事件を明らかにすることが出来ると思っていた。
警察は一定の解決を見ているようだが菅田はそうは思わない。
チャペルが終わる時刻から何度も見ているが、本館のフロント付近は人で賑わっていた。鍋島は原口がいなくなった日の防犯カメラの映像を見ていた。
「あの二人、美緒が菅田さん達を襲うことを知っていたというのですか?」
鍋島がパソコンで映像を見ながら聞いてきた。
「あの時には多分、知らなかったのだと思います。美緒の行動が怪しかったから隠れてついて行ったと以前、供述しています」
二人の行動には一貫性がある。あくまでも美緒を陥れようとしている。それにあの様子を見ても警察に届けようとしなかった様子から初めは友人を庇ってと考えたが、宇佐美の話からそれが違うことに気がついた。
二人で映像を見ながら、二人が何を目的にここに来たのかという話になっていた。
「あの二人がもっと前に美緒を脅していたのだとしたら、美緒を突き落としたのは二人のうちどちらかではないかと思うのですが」
鍋島が言うのも分かる。菅田はそれなら宇佐美が感じたあの三人の関係性に疑問が出てくる。
美緒が怪我をした時点で脅していたのだとしたら、二人が美緒に気を使うこともないはずだ。それに能村の遺書にも矛盾が出てくる。原口は本当に能村と言い争いで亡くなったのかと言うことだ。
能村は美緒を脅すことに消極的な考えだと遺書には書かれている。やはり、能村と原口が美緒をこのホテルに連れてきた理由が気になってくる。
原口が主導権を持っていて、それに付き合っていたのが能村なのか。
堀内と美緒の兄、大崎正樹の遺体は見つかっていない。警察が必死にその行方を捜しているがまだ、見つかっていないようだ。
田辺を襲ったのは大崎昌紀だろうか。菅田も今西もホテルの外で襲われている。田辺だけがホテル内、それもチャペルの庭園で傍に人がいる状況で襲われている。これはどう説明するのか。
美緒と昌紀は、はかなり念入りに計画を立てていたはずだ。それなら田辺を襲ったのは今西の時と同じ予定が変わったと言うことだろうか。
あれほど念入りに計画を立てて犯行に及んだ昌紀と美緒がホテルの敷地内に入り込んで犯行に及ぶとは考えづらい。
美緒が怪我をしたことが原因か?
美緒の怪我はあの時、すでに治っていたはず。菅田は映像をもう一度見直す。どこかにきっと残っているはずだ。
「ありました」
鍋島が声をあげた。
「誰ですか」
「大崎美緒です」
菅田は顔を歪めた。映像を見ると美緒はゆっくりだが、しっかりした足取りで原口をつけていた。
「能村はどうしていますか」
菅田は能村の事が気になった。
「出ていきましたね」
鍋島は映像を見ながら言い、更に早送りして見ている。
菅田は鍋島の隣に座り直す。一緒に映像を見ていると人影が映し出される。
「帰ってきましたね。一人です」
そこに映っていたのは能村だった。
その後、映像を見続けて美緒が帰ってきたのは能村よりも一時間も後だった。
「どういうことでしょうか?」
鍋島が美緒と能村が出て行った時間と帰ってきた時間を見て呟く。菅田も二人がホテルを出てからの行動が分からなかった。
確か、警察では二人はホテルの部屋にいたと言っていたはずだ。その後、能村の遺書では原口と言い争いになって殺したと書かれていた。その為、菅田たちは原口と能村は原口の遺体が発見された場所に行っていたのだと思っていたが、能村がホテルを出てから帰るまでの時間で、遺体発見場所の往復は誰か協力者がいないと時間的に難しい。
それに美緒の行動も気になっていた。何処に行っていたのか。
菅田は美緒の怪我をした日の映像を見始めていた。鍋島はその後、堀内が能村を呼び出した日の映像を見始めていた。美緒が隠している何かを見つけ出したかった。
どれくらいの時間が経ったのか、二人はひたすら映像を見続けた。
菅田は本館のフロントに入ってくる見覚えのある人物を見つけた。何度か映像を確認する。そこには原口がいた。
原口はあの時、部屋にいたと言っていたな。ここでも嘘があった。
菅田はそのまま映像を見ていると、能村も本館の入り口から入ってくるのが映っていた。
これでは美緒がチャペルで怪我をしたとき、二人とも部屋にいなかったことになる。
映像を流れるように見ていくと原口と能村の行動は隠れるように本館の入り口から入ってきて、団体客に紛れるように部屋に戻っていく。
菅田はもう一度初めから見始めた。
美緒が本館を出ていくのが映っていた。その後、原口が出ていき続いて能村も出ていく。美緒は誰を庇っているのだろうか。
何度か流して映像を見ていると、見覚えのある人物が映っていた。
どうして?
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