■ 第8話 今度は私たちが

  その場の誰もが驚いていた。


 カケルやリリスが驚いたのは勿論、本人のアルマインもビックリ

 しすぎてひっくり返ったまま、まだ体を起こせていない。

 

 「アル!? 何でお前ここに居るんだ!?」

 

 「あ... え...っと... なんでだろね...?」


 派手に何かが落ちるような大きな音が気になったのだろう。

 リリスの母親まで部屋に来たのだから大変だ。


 リリスの母は見知らぬ子汚く見える少女に驚く。


 その娘がカケルとリリスの話の話によって、向こうの世界で

 二人が何かと世話になってるアルマインだと聞き再度驚く。


 リリスの母はアルに改めてお礼を言い、下に降りてお茶をと言い出す。



 とりあえず話は落ち着いたようだ。



 カケルは、アルは自分の家に来るよりリリスの家にいる方がいいかと思い、

 リリスも母親も了承、カケルは家に帰る事にした。


 アルはカケルが帰るのを残念がったが、こればかりは仕方がない。




 リリスはアルにまずは風呂を勧めた。


 勧められるままリリスとアルが風呂に入ってる間、リリスの母は

 別の世界の人間が来てしまったことに、どんなおもてなしを

 したらいいか思い悩んでいた。

 

 とりあえず湯を沸かして、紅茶でも入れようと思った。


 まぁいろいろ考えても仕方ない。こっちの、まぁ一般人の生活を

 そのまま見せるしかないな、と。



 風呂から上がるとリリスは思わずときめいてしまっていた。

 リリスにより全身を磨き上げられたアルは...

 今まで見てきたイメージとまた違い、思った以上に美人さんだったのだ。


 今は伸ばしている状態だという金髪にシャンプー&トリートメントを

 すると、まさに髪が煌めきサラサラな状態になった。

 アルはその気持ちよさに感動している。


 更にドライヤーにて髪を乾かすと温風に揺らめく髪が光と乱反射し

 まさに金糸が踊っているように見える。

 温風で速攻髪が乾かせるという事自体にもアルは感動している。


 着替えの服はリリスの姉で大学進学により上京している、姉の服を借りた。

 アルはリリスより身長が5cmほど高く、姉の背丈とほぼ一緒だった。


 海外の美人俳優を見ても、単に「人形が動いてるみたいー」という

 感覚のリリスにとって、マジで美人な外人、ハンパねぇ!って

 目から鱗の感覚に陥っていた... あのアルが....


 「リリスの世界は違うなー! いろんなモンがあって全部に驚かされるわ、

  すまないが戻れるまで暫く厄介になる。ワリィね!」

 

 ...喋り方はそのままなので、逆にその部分にホッとするリリスだった。

 


 食事はアルはなんでも食べるが、向こうの生活では基本少食だった。


 森の恵みの木の実を小さければ適度な数、ある程度大きければ1個、

 という感じで、何の実がいつごろから食べられて、最盛期は何時で、

 それと同時に常に在庫/腐るまでの間を計算しながらの食事なのだ。


 釣った魚をさばいたりそのまま焼いて食すのも基本1匹という感じであり

 リリスの母が出す食事の量には正直驚いていた。


 アルの目の前に置かれた今日のメニューは... 

 主食の米が茶碗一杯、大皿にはその日のおかず大き目なハンバーグと

 横に少量の野菜、更には大根と油揚げのお味噌汁のお椀。

 燭台の中央にはご飯のお供に納豆と海苔の佃煮もある。


 アルもさすがに箸の持ち方は判らなかったようで。

 気が付いたリリスがスプーンとフォーク、ナイフを出してやると

 「これはありがたい!」と食べ始めた。


 ハンバーグの旨さにまた泣きそうなほど感動している。何度目だ(笑)

 


 さすがに量が多くアルは残してしまい、申し訳なさそうにしていた。


 そこはリリスが向こうにおける食生活を説明をすることで母も納得し、

 次からは少し量を減らすと約束した。


 

 アルはリリスの部屋にて寝る事になった。


 今日は「アルがベッドに寝て!」とリリスは言った。

 そしてもちろん、「ベッドで寝るのは1日交替でね!」と付け加えていた。

 向こうの、アルの家でも基本そうだったのだ。



 リリスはだいたいこのあたりの時間(21時過ぎ)に読書をしている。


 中央の電気を消し、リリスは勉強机のライトで読書を始めた。


 

 しばらくするとアルはぽつりと絞り出すようにつぶやいた。


 「自分じゃ何もわからない世界に来るって...すごく心細いよな。...


  お前らがあの歳であたしら居た世界に来た時って、...もっと心細くて...

 

  怖かったんだろうな...」



 本に向かっていたリリスはゆっくりと振り返ると微笑みながら言った。


 「 ...そこにアルが来てくれたんじゃない。

  リリスはとっくに泣いてたし。


  カケルくんと二人で頭真っ白な時、

  そこに頼れる人が来てくれて...

  本当にリリスはうれしかったんだよ!


  今度はリリスとカケルくんの番だよ。



  もしかして、帰れるかどうか不安なのアル...?


  うん、そうね。


  あの時、アルが私たちに言った言葉を今回はリリスが贈るね。



  ”大丈夫! すぐに帰れるって!”


  ”いっしょに探しだそう!” 」




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