■ 第7話 のんびりと ─── 君がなぜここに! - その3


 カケルとリリスが、アルの居る本の世界に来て3日目の朝となった。


 この日カケルは朝からのんびりと半分昼寝しながら、泉で釣りをしていた。

 釣れれば今日の晩飯用にアルが捌いてくれる。

 まぁ、釣れなくても別に文句を言われることはない。


 アルとリリスは「女子会」と称してどこかに出かけて行った。

 リリスが向こうの言葉をアルに教えて一緒に出掛けたのだ。

 

 二人はカケルに内緒で 「酔っ払いベリー」 という果実の群生地帯に行き、

 余りのおいしさにお腹一杯食べて帰って来た。

 帰ってきた二人は派手に酔っており、大いにカケルを慌てさせた。


 カケルはその夜、大変だった。

 二人とも吐く事はないが、ともかく通常のアルコールと違って

 アルもリリスも寝ないのだ。 

 そればかりかカケルを捕まえて離さず、無駄話を、しかもかなり

 意味不明な話を延々と続ける質の悪さ。

 酔ってないカケルとしてはその場から逃げられず、最終日の夜なのに

 とんだ災難だった。


 夜も更け、朝となった。


 カケルがはっと気が付いた時、カケルはいつもの場所に寝ていた。

 アルの部屋の中央に3人して川の字になっていつものごとく

 寝ていたのであった。



 さて、そこから数時間たち...。


 カケルとリリスは元の世界に帰る事となった。


 森の泉の前に3人は来ていた。

 「今回も楽しかったわ! また来きてね!」

 「ありがとね、アル。また例の場所行こうね!」

 「た、頼むからあの酔っぱらう奴、次来たときはやめて。介抱する身になってよ」


 アルもリリスはやつれ気味のカケルを見ると大声で笑った。


 「ああ、カケル、今回のスイーツ、まだ残ってるし今日中にいただくわね。

  本当に美味しかったわ。ありがとう。」 


 そういうと、アルはカケルの頬に軽くキスをした。


 思わぬアルの行動に固まるカケル。 


 真っ赤になってるリリス。


 「そら、行くなら早く行け! また来てね!」

 そういうとアルはカケルとリリスの頭をくしゃくしゃっとやった。


 「あ、ああ。また来る。... リリス、じゃ始めようか」


 そうなのだ。

 最初にPDしたとき、帰り方が判らずかなりの時間がかかったのだ。


 最終的に導き出されたのが、出現する場所にある大石に二人は手を置きながら、

 お互いの頬を同時に叩く、要は同じタイミングで互いにビンタをすると

 その同時の衝撃と共に、向こうの世界に意識が戻っているのだった。


「あ、そうだ」 アルがちょっと口をはさむ。


「カケル、リリス、ちょっと目をつぶってみて」


 二人からすると、まぁアルは姉のような存在である。

 特別な危害を加えることはないので、二人は「何だよ今頃(笑)」と

 ぶつくさ言いつつもアルの言葉にしたがって目を閉じた。


「じゃあ... またなっ!!」


 アルの声とともに、カケルの首は強制的にアルの手によって持っていかれた。

 すると、カケルの唇に何か柔らかいものが触れた。


 はっとカケルは目を開ける。

 そこには目を閉じているリリスの顔が。 


 これって... !!!


「また来いよー」


 かすかにアルの声が聞こえた感じがした。その瞬間────

 カケルとリリスはほぼ同時に、リリスの部屋にて意識が戻っていた。


 思わず唇に手をやりそうになるのを抑えて、赤面するカケル。

 そのカケルにどうしたのかを聞くリリスだったが、カケルは答えられない。


 (やばいな、まさかアルがあんなイタズラしてくるとは!

 つか、それで戻れるってどうなってんだ!

 ...リリスは気が付いて無いようだし、今回の事は黙っておくか...)


「いや、何かアルがイタズラしかけたみたいでさ。

 とりあえず戻れてよかったよ。いつもの方法じゃなかったな」

 

「うーん、アル何やっただろう。何か柔らかいものが当たったような気が

 したんだけど、目を開ける時間、無かったよ」


 カケルはドキリとしたが、結局何も言わなかった。

「じゃ、俺も今日は帰るか ──── 」


 そうカケルが言いかけた時だった。


 どぐしゃっつ!!


 カケルとリリスの上に何かが落ちて来た。

 痛さに声を上げる二人だったが、次の瞬間別の意味で。

 驚きの大声が二人から出ていた。


 そこに落ちて来たモノ、それは ──── 


「アル!なんで君がここに居るんだ!」



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