■ 第6部 のんびりと楽しむ日々 - その2


  アルが窓辺の蝋燭に火をつけると、部屋の一部がぼんやりと明るくなった。

 そろそろ日が暮れてきたようだ。


 アルは疲れていたのか、スイーツを食べ終わり、ベッドに横たわると

 カケルとリリスの無駄話を眺めていたと思ったら...

 気が付くと既に舟を漕いでいた。


 それに気が付くと、リリスもテーブルを布ドアから出て左の所に置いた後に、

 アルのベッドの向かいに置いてあるシーツのようなものを床に広げる。

そして手持ちバッグから膨らませ空気枕と大型のハンドタオルを取り出し


 「今日はバスケで疲れた、だからもう寝る」

 部屋の左側で大型タオルをおなかに乗っけるとリリスも秒で寝てしまった。


 残されたカケルは呟く。 


 「お前ら速攻で寝るとか...俺、一応男だぞ...」



 

 次の日。

 カケルが目を覚ます。 ...今、何時くらいなのかな...


 いつもはネトゲで夜更かしして、次の日は目覚ましとおふくろの

 怒鳴り声で強制的に目を覚まさせられるのだ


 この世界に来ると、思い切り寝たいだけ寝た上での目覚めとなるので、

 目覚めが本当に気持ちがいい。

 カケルは戸棚の上のボウルの水で顔を洗うと。外に出てみた。

 

 木の下の方に、アルとリリスが居た。

 アルが作ったハンドメイドのイスに座り、二人は話をしている。


 アルの足元にはオリモンの実が3個。

 たぶん、アルが起きて朝一番に取ってきたんだろう。 


 何度か一緒に取りに行った事がある。

 捥いだら早めに食べないと傷みやすい果物だ。


 外側は種は多く喰いにくいが、中央部の果肉がマジで旨いんだ。


 

 木から降りたカケルは挨拶すると、アルがオリモンの実を投げて渡す。

 どうやらリリスが俺らの世界のスイーツについて説明していたようだ。


 カケルは実にかぶりつくと口の中に甘みを感じるとともに、口の中の大半である

 種を、歯磨き用に持ってきてたコップに出す。

 


 カケルは実を食べ終わると二人の前で本日の希望を話した。 

 アルとリリスが興味深げに話を聞く。

 

 要するに、とアルは言う。

 「カケルは男に目覚め、あたしとリリスを襲いたいのを我慢するために

  別部屋欲しいってのね! あぁカケル~、ちょっと見ない間にこんな

  おませさんになったのね、 アル姉ちゃん悲しいわ~」


 「ちょっといい加減にしろアル、

  お前のおっぱいなんて小さすぎてあのリリスにも及ばないだろ! 

  (...やべ、ちょっと言い過ぎたかな)


  え、ええっと! で、日本のことわざに-------- 


  あ、 Σ



  えっと... ;



  アルごめん、ちょっと言いすぎ... 



  おい。 おいおいおいおい!


  ごめんごめんごめん!! 謝るから頼む、話を聞いて!」


 「カケル~ 今なんて言った~ 」


 カケルの前ににじり寄るアルの頬がちょっとピクついている。


 「カケルん、リリスとアルの、そんなとこばかり見てたのね、ショックだわ...」




 「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

  悪かったよ、悪うございましたよ!


  俺だってもう15になる男だよ。

  女にちょっと興味持ったっていいだろ。 


  ただ、さっきも言いかけたけど。

  日本のことわざに「男女七歳にして席を同じうせず」ってあってだな。


  今更だが俺もこっちで寝る時だけでもそうしようって思ったんだよ」


 「ふーん」 ジト目のアルが答える。


 「で... ですから、今日は向かいの木の上に、 ”俺用の寝床” を

  作りたいと思いまして.... 」


  ...森にしばし、静かな風が流れる...


 「手伝ってください、...お願いします...!!」

 カケルは土下座をして頼むのだった。

 

 とたん、アルはニッといつもの顔に戻ると笑いだした。


 「ったく(笑)、ついこないだまでこーんな小さかったくせに、

  そんなことまで考えるようになったのかあ。うん、わかったわ。

  工具を持って来るわ。今日は忙しくなるよ!」


 「アル... 助かるよ...」


 「あ、リリスはこっち来なさい! カケルの傍にいると危ないわよ」


 「だから、かんべんしてくれってばー!」

 

 そうして3人はケンケンガクガクな言い合いをしながら────

 アルはそういうカケルとリリスを笑って眺めながら────

 3人でDIY、カケルの木の上の寝床作りが始まった。


 さて、どういうデザインにするか、大きさにするか、材料はどうするか。

 材料集めに結構な時間がかかり、結局1日では出来上がらなかった。


 その日の夜、カケルはアルの家の部屋にて...。

 テーブルの代わりに追い出され ────

 一人悲しく外に寝かされたのであった...。


 次の日の昼過ぎに、ようやく木の上の、カケル専用の

 一人用寝床は完成したのだった。



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