■ 第3部 アルマイン・ポールフ
いやいやいや、びっくりしたのよー!
明日の朝食べる、マレンコの実を取りに行った帰り道だったの。
水浴びでもして帰ろうかと思って、泉の所を通りかかったら...
ここ「カ・ディームの森」の奥に隠されたような、この泉の近くって
人が居る事って殆どないのよ。
そこに年端のいかない子供が2人、泉の近くに居て泣いてるの。
あたし、これは放ってはおないと思ったの!!
ハーイ、ボクたち!
君たちはこんなとこで、何をしてるのかな~?
はいはい、女の子、もう泣かないの。
ふーん...。 迷子、かな...? 兄弟?
男の子、よく我慢したわね。女の子を守ってたのね。
君はいい子だね。
こっちに来なさい。 私の家があるのよ。
あたしの家にお客さんが来ることなんてそうそうない事なの。
ちょっと嬉しいかも!
あれがあたしの家よ!
木の上の家なんて素敵でしょ?
あれ? 木に登れないの? あはは。
男の子、さーすがー! 上手く登れたじゃん!
女の子も上げようね。
へえ、君はカケルっていうんだ。
女の子も、やっと登れたね。 へへっ。
君の名はリリス? 名前の響きが、すごく素敵ね!
お客さんなんて来ることないから散らかってるけど許してねー。
さて、じゃあお姉さんとお話ししようか。
君たちはここ、「カ・ディームの森」にどうして居るのかな?
っていうか、何故あの泉の所に居たのかな?
...うーん? わからない?
わかった! じゃあちょっとお話を変えようか。
お姉さんから先に自己紹介しちゃうわ。
よく聞きなさい! えっへん!
あたしの名前はアルマイン・ポールフ。
アルと呼んでね!
ポールフは一応、お母さんの苗字ね。
歳は先月、6の月に16歳になったわ。
そして、この森に住み始めたのは10歳を過ぎた頃よ!
あたしは俗にいうここの王様のお妾さんの子供になるらしいわ。
お母さんが病気で死ぬ寸前に王様に直訴して、当時6歳だったあたしは
お城に引き取られはしたんだけど。
使用人扱いで酷い扱いだったわ。
あたしは我慢に我慢を重ねたけど、ついに王様含めた
殆どのお城の人間に嫌気がさしてしまったの!
そして我慢の限界から10歳になるとお城を飛び出して...
この森の中に住むことにしたの。
王様やその他の奴らは厄介払いが出来たと思ったようで探しにも来なかったわ。
唯一、王子のサンフランだけは、こっそりとあたしと仲良くしてくれてた。
ただ、場内では他の人の目もあって話すことは少なかったんだけどね。
サンフランは時々お城を抜け出してあたしの手助けをしてくれたの。
木の上にこの家を作る時、手伝ってくれたことは一生、忘れないわ。
あたしは後ろ髪を短く切って、冬の間は町で働くの。
こんな粗末な服を着てる女の子が王族の端くれとか誰も思わないしね。
自分で言うのも何だけど、形だけでも王族に生まれたのなら
もっと器量良く生まれたかったわ!
この低い鼻と広いオデコにされた神様を恨むわ!
髪で隠しても風が吹くと額の広さはみんなにわかるし、
絶望に打ち鬻がれてどんなに泣いても一生変わらないんだもの!
冬の間は町で、住み込みで働けば宿代も浮くわ!
そして冬の間に貯めたお金で森に帰る前に買い物をするの!
マッチやランプ、やわらかい白パンやチーズ、干し肉にぶどう酒...。
モノを買うって、本当にワクワクするわね!
でも、モノを持ちすぎてもダメ!
この簡単なつくりの木の上の家に、多くのものは持ち込めないし
持ち込み過ぎて床が抜けたら大変だもの!
以前はたまに来てくれたサンフランはここ1-2年来てくれなくなったわ。
さすがに王族としてはそうそう子供でもない年齢となって、
自由に外に出るのは難しくなったみたい。 残念だわ。
サンフランがたまに持ってきてくれたお菓子は本当に美味しかったなあ。
まぁ、身の丈に合わないモノを今更欲しがっても仕方ないけどね!
あたしはこの森に住み、冬は街で働いて。
春から秋までは森の中で魚を釣ったり、森の恵みを頂きながら...
冬に蓄えたもので質素に、しかし自由に暮らす。
自分が生きるためにやる最低限の責任は自分でこなすし、
こういう自由に生きる事が、あたしに合ってると思うんだ。
これがあたし。アルマイン・ポールフよ。
判ってもらえたかな?
じゃあ、今度は男の子、カケルから何か自分の事、話してみようか!
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