■ 第2部 Picture Dive!

俺、杉下翔(カケル)と早野哩栗鼠(リリス)は中学二年になった。



 そろそろ夕方だというのに...


 お日様が笑い、夏が絶好調を唄ってる。 


 入道雲はあれど、太陽を全く遮ろうとはしない。   


 ... 夏休みまであと何日だ? ...


 重い足取りで、俺はリリスの家に向かっていた。




 リリスは華奢な割にいろんなスポーツをすることが大好きで。


 しかも結果を出してしまうという事で、この夏の間もいろんな


 部活を掛け持ちしている。


 昨日は剣道で今日はバスケって言ってたっけ... よぅやるわ。




 最近俺はネット対戦-格闘アクションゲームにハマっている。

 

 夏のイベントで追い込みの時期なんだよなぁ...。




 今日リリスの家に向かってるのは、別に俺とリリスは付き合ってて、


 毎度家に呼ばれるとか、そういう理由ではない。



 幼稚園時代からの馴染みでリリスのお袋さんとも顔なじみだ。



 そして、俺が今日、リリスの部屋に何をしに行くかまで、

 リリスのお袋さんはモチロン知っている。




 

 幼稚園時代のあの日----------



 絵の世界に俺とリリスが入り込んでしまったあの日。



 あれ以降、俺とリリスはほぼ定期的にリリスの部屋で...




  2人が勝手に決めた合言葉


 「 Picture Dive  (PD)」を行ってきた。

   ピクチャーダイヴ




 今考えると、とんでもないことだ。



 最初の世界からどうにかうまく帰れたとはいえ...


 俺とリリスはそれ以降もこっそりと。


 いろいろな絵や写真の世界に入り込んでは戻って来るという、


 今から考えればとんでもない危険な事を繰り返していたのだ。




 何度も繰り返し、PDをリリスの部屋でやっていたこともあって。


 小学3年生の夏、ついにリリスのお袋さんに見つかってしまった。



 お袋さんによると、俺とリリスが手を握り合ったまま、


 意識を失ってるように見えた、と。 かなり慌てたらしい。




 偶然にもPDからその直後帰還した俺らは、こっぴどく叱られた。


 そして、PDは完全に慣れた世界にのみ、週に1回だけ行くことを許可された。



 結局。




 俺とリリスは、PDを最初に行った、あの絵本の世界に行くことにしている。




 もちろん、単にあの森、あの世界に最初に行ったから、という訳ではない。




 理由はある。




 その絵本の世界は「ブロンミッド王国」だと聞いた。

                     ・・・ 



 あの本を最後まで通して読むと、動物たちがお祭りをするという、


 架空の、動物がおしゃべりまでする童話だった。



 但し、本の、絵の世界に入ってみると世界は少し違っていたのだ。


 本の本編には登場しない奴が、この森には隠れていたのだ



 初めて俺とリリスがあの世界に飛んだ日。


 何もわからず、どうしていいかわからず...


 だんだんと日が暮れて森が薄暗くなり。


 リリスが泣きじゃくり、俺も心細く泣きそうになっていたあの時.....。




 奴は現れたのだった。



 そう。 



 そして俺らは奴に、アルに会いに行くのだ。



 あの途方に暮れて泣きそうだった、俺とリリスの前に...



 突然、笑顔で現れた奴。 




 アルマインに、今日も俺たちは会いに行くのだ。




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