練習問題③長短どちらも 問2

半~一ページの語りを、七〇〇文字に達するまで一文で執筆すること。


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 そんな巷で言われていたような大それたものではないですが、ええ、何と言いますか、物を動かすと言うよりは皮膚感覚を延長するとか、もう一本二本腕があるイメージで、そもそも初めは風呂の中で皮膚の上に感じる脈で遊んでいただけで、それが指先、二の腕、足、と脈の感覚を追っている内にふと思い付きでその感覚を左腕の上で滑らせてみたのですが、そうしたら予想もしていなかった右の肩に確かに水の流れを感じまして、でも考えてみれば確かに滑らせた感覚の延長線上の位置だったもので、もしかして、これは本当にあるのではといろいろ試している内に、その何でしょう、サイコキネシストなどと呼ばれてしまったのですが、実際のところはシュリーレン装置を介してようやく分かる程度の揺らぎが起こせるといった程度のなんともささやかな話でしかなく、ずいぶんと恥ずかしい思いも致しまして、ですが元は風呂の中での手慰みなものですから多くの方の興味が他所に移っていった後も一人遊んでおりましたら、あっはい、コツですがそれはもういかに想像力をたくましくできるか、例えば、お湯の中で手で一度扇いだとして、その手の動きを、水の動きを、身体に当たった後の流れの分かれ方をどれだけ正確に想像できるかに懸かっておりまして、それが十分にできてしまえばあとは信じて試すだけですが、お湯の温度はやはり高めが良くて、その方が皮膚の感覚が鋭く、ありていに言ってしまえば少しでも動けば熱いと感じる方が弱い力でも感知しやすいということで、逆に夏場のぬるま湯だと初めは厳しいかもしれませんが、いえ、「それ」があると分かった今でしたら案外すんなりと身に付くものなのかもしれませんので、いろいろ考えるよりも試してみられる方が早いかと思います。

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