第6話 記録
9月7日 月曜日 この日は俺と下田が初めて対面した日だ。
この日は俺の覚えている事と映像は一致している。
9月8日 火曜日 下田が17:00頃俺の部屋のチャイムを鳴らしている。この日は俺は遅番だった為、16:00前には家を出ている。下田は続けて504号室の部屋にもチャイムを押している。504号室の住民は同じ工場で同じ時間帯に仕事をしているはずだ。当然家を出ていてドアは開かない。下田はその後504号室の奥の防犯カメラの死角に移動した様だ。
死角?
俺は5階の防犯カメラの位置を確認してみた。
5階の廊下の一番奥。504号室の後ろに防犯カメラが設置されており、その先は行き止まりで何もない。試しに俺はその場所に行ってみた。5階の廊下の一番奥。そこからは手すりがあって下の風景が見えるだけだ。この部分が死角になっているらしい。下田は特に意味もなく下の景色を眺めていただけだろうか?
まあいい。
俺は映像を早送りした。
9月9日水曜日から、9月15日火曜日。
この間下田は大体一日置き位で定期的に5階にやって来ている様だ。
俺の住んでいる501号室と504号室のチャイムを鳴らしているようだが、どのタイミングも俺は不在だ。不在を確認すると・・・癖なのだろうか?景色を眺めている様で、防犯カメラの死角部分に10秒から20秒ほど移動している。それから特に長居する事は無く、割とあっさり立ち去っている。
9月16日水曜日と9月17日木曜日は俺の在宅時に下田がやって来ている。
俺の記憶通りに16日も17日も下田は俺の110番で警察に帰されている。
一つだけ不自然に感じたのが、今度は504号室の方に行ってから下の景色を眺め、その後に俺の部屋のチャイムを鳴らしている。
そして9月18日金曜日。
つまり俺が隠しカメラを設置した昨日。
俺が隠しカメラを設置してから約1時間後。
19時頃に下田がやって来ている。
その後俺が設置した隠しカメラを直立不動で凝視している。
ほんの数十秒だけ申し訳程度に504号室の方に移動したりすることはあるが、それ以外はずっと俺の部屋の前に突っ立っている・・・。
そして早送りが9月19日土曜日。
今日になり午前9時ごろに警察がやって来て下の階に降ろされていく・・・。
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「気は済みましたか?青木さん」
安藤さんが俺に言う。
「あ、はい。一応全て確認しました」
「とりあえず私は署に戻ります。上司とこれからの対応策を協議したいと思います」
「あの・・・。それで、ストーカー規制法等の有効な手立てはあるのでしょうか?」
「それを協議しようとは思っているのですが・・・もしかしたら現段階では難しいかもしれません。下田さんの言い分ではあくまで営業活動の一環で行っているとの事ですので・・・。もちろん青木さん宅には来ない様に厳重注意はしているのですが・・・」
俺は失望した。
民事不介入だっけ?
結局警察は何か事が起こってからではないと対応してくれないのかもしれない・・・。
安藤さんはドアや、窓などの防犯対策のパンフレットなどをくれたがそれ位ネットで情報検索すれば簡単に得られる情報だ。
初めて警察に110番した時は警察や安藤さんも頼もしく有能そうに見えたが、今の状況では全然頼もしく思えない・・・。
俺は台風の中帰って行く安藤さんの後ろ姿を見ながらそう思った。
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