第4話 連日

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9月16日 水曜日

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その週は早番勤務で帰宅は午後4時位だった。


家でくつろいでいるとチャイムが鳴った。


・・・まさかとは思うが。


俺はドアののぞき穴から外を覗いた。


ギョっとした。


ドアの外では下田がドアの、のぞき穴を凝視していたからだ。


そんな事しても部屋の中が見える訳でも無いのに・・・。


正直、先週の金曜日から音沙汰無かったので油断していた。


俺は居留守を使う事にした。


しばらくしてもう帰ったかなと思い、またのぞき穴を見ると、下田はまだ立っていた。


「青木さん。いるのは分かっているんですよ」


どうせコケ脅しのカマかけだろう。俺は再びドアから離れようとした。


「青木さん。知らないんですか?ドアののぞき穴から外を覗く時、穴の光が消えて影が出来るんですよ。あなた今二回目の覗き見しましたね?」


そうだったのか・・・。

確かに覗き穴に目を当てると穴と顔が密着状態になり影が出来るのは道理だ。


俺は諦めチェーンを掛けて対応した。


例によって下田は腕を入れてきたがチェーンが邪魔で中に入る事は出来ない。


「青木さん。このチェーンは何ですか?あなたがいつまでたっても謝罪文を送らないから私はわざわざ来てあげたんですよ?早く私の前で土下座して下さい」


下田は何かわめいているが俺は無視して部屋で夕食を食べた。


一時間後。

下田はまだいる。腕を入れ続けている。

俺はパソコンでネットニュースを見て時間をつぶした。


二時間後。

下田はまだいる。腕を入れ続けている。

俺はうるさいのでヘッドホンを装着し音楽を聞いて時間をつぶした。


三時間後。

下田はまだいる。腕を入れ続けている。

俺は面倒くさくなったので110番に連絡した。


警官は10分後に到着した。

下田は警官2人に連れられ、渋々その日は帰っていった。


俺は警官にお礼を言った。


俺は念のためその日から窓にも鍵をかける様になった。


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9月17日 木曜日

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帰宅してすぐにチャイムが鳴る。


のぞき穴で確認して、下田の姿を確認すると今度はドアを開けずにすぐ110番した。

警察が来て下田は帰させられた。


俺は警官にお礼を言うと同時に質問した。


「下田がやって来ること自体を防ぐ事は出来ないんですか?」


初めに下田が来訪した時対応してくれた、初老の警官が答える。


「そうですねえ。厳重注意はしているんですが、本人がそれを守る意思が無い事には難しい問題なんですよ。とにかく彼がまた来るようでしたら110番をお願いします」


俺は警察の力にも限界がある事を悟った。


その日アマゾンで隠しカメラを速達便で購入した。


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9月18日 金曜日

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帰宅後、アマゾンから隠しカメラが到着したので玄関の目立たない所に設置した。


取り扱い説明書を読んで色々設定する。


後はあの男が来たら一部始終を録画するだろう。


だがその日チャイムは鳴らなかった。


俺は久しぶりに静かな一日を送ってくつろいだ。


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9月19日 土曜日

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俺は朝起きて試しに昨日録画した隠しカメラの映像を確認しようとした。

えーと、ここをこうして・・・こうすれば録画映像が出るのか?

俺は説明書を見ながら録画した映像を再生してみて凍り付いた。


下田は昨日もやって来ていたのだ。

夜の7時頃に下田は部屋の前に来ていた。

しかもドアの前に立った瞬間隠しカメラに顔を向けて凝視している。

今俺が見ているモニターごしに下田と俺は目が合った。

いや、むしろ監視カメラで監視している立場の俺が監視されている錯覚に陥った。


隠しカメラの隠し方が甘かったか?

いや、そんなはずは無い。

例えそうだったとしても、ドアの前に立った瞬間に何故隠しカメラの位置が分かるんだ?


カメラを設置していた時に階段から伺っていたのか?

・・・分からない。

ただ、カメラを設置する瞬間を下田に見られる可能性はあらかじめ考慮して誰もいないのを慎重に確認して設置したはずだ。


俺は録画映像を早回しした。


1時間・・・2時間・・・。


下田はほとんど微動だにしないで直立不動のままカメラを凝視している。


3時間・・・4時間・・・。


トカゲの様な顔。

爬虫類の様な目。

左頬のホクロ。


その全てが不気味に見えた。


映像再生速度をさらに早回しにする。


6時間・・・8時間・・・10時間・・・12時間・・・14時間・・・。


不意に録画撮影再生モードが終わる。


画面には現在のドアの外の様子が写し出される。


俺は目を疑った。


下田は今この瞬間も・・・このすぐドアの向こうで・・・直立不動の姿勢を保ったまま・・・爬虫類の様な目を・・・カメラに向けているのだ・・・。

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