第65話 切り札
「始まりますね」
隣でモニターを見つめる桂木に、
最終ピリオド第16ゲーム。
二人の見つめる先には彼らにとっての最後の壁、
「作戦、上手くいきますよね」
自分に言い聞かせるような呟きだ。だがその声に不安の色はなかった。
桂木がいかに多くの窮地をくぐってきたのかを。そして
恐怖がないはずなどない。
だがそんな全ての感情を、仲間への信頼が上回っていた。
「大丈夫。モニターを見て」
小さく映る
「
ここまでは予定通り。
あとは……」
桂木はそこで言葉を切った。
あとは
「あとは時が来るのを待つだけだよ。必ず俺たちが勝つ」
その言葉に
『それでは、勝負』
結果は予定調和。
ゲームが終了し、
「お先に失礼しますわ」
その背中を
そして霧継に30秒ほど遅れて、
廊下に出て、その先に視線をやる。
電光表示板にはエレベーターの台が4階にあることを示していた。
(
廊下の中央まで足を運び、止める。そして
新品のように沁みひとつない赤の絨毯が廊下の中央を彩っている。
そしてこの下には、桂木の“切り札”が仕込まれていた。
(ここまでは順調だ。
仕掛けの開放は次の次。残り2ゲーム。
彼の用意した逆転の策を吉田に伝えなくてはならない。
これさえあれば……)
廊下の端に寄り、
そして探る。神経を尖らせ、ゆっくりと手を這わせてゆく。
もちろんおおよその位置は桂木から伝えられているため、探そうと思えばすぐに見つかるはずのものだ。
しかし
「お探し物は、これかしら?」
不意打ちのように、
ここで聞くはずのないはずの声。
そして、ここで最も出会ってはいけないはずの人物の声でもある。
「
呟き、そして後悔する。
エレベーターの位置だけを見て
不用意に“切り札”の確認をしようとしてしまったことを。
(罠だった! エレベーターに自分は乗らずに4階へ送ったのか。
そしてそこまで仕込んだ上で、“自分は扉の影に隠れていた”とは)
そして
振り向きざまに
背後に立つ女……
桂木が
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます