第64話 思案
零ゲーム最終ピリオド開始。ついに勝者を決する戦いがはじまる。
第15ゲーム指名者のタテハは
そして同じくチームへ所属する、吉田と
「現在のスコアはこう。
タテハ 12pt
吉田 16pt」
「まずは最下位の吉田さんのポイントを減らす作業を優先しましょう。
続いて
ポイントの低い順に勝たせるのは
でないと
彼女のチームは利によって結び付いているところが大きい。だからこそ、作戦へ協力させるためにチームメイトのポイントを優先して減らす必要があったのだ。
ここでも
「第15ゲーム タテハさんvs吉田さん
第16ゲーム
第17ゲーム
第18ゲーム わたくしvsタテハさん
第19ゲーム 吉田さんvsわたくし
この順でポイントを減らせば、第19ゲームでちょうどわたくしのポイントが零になる。
そして第20ゲームで指名権のある桂木さんと、第21ゲームで指名権のあるミシロには指名権が回らない。
そして念のため」
4人の見下ろす先には、20枚のカードがあった。4人のもつ手札の全てだ。
「対決に向かうプレーヤーは自分の出す1枚だけ持ってホールへ向かう。
そして残りの18枚は、部屋に残った2名が管理する。
もちろん部屋に残る人もカードに触れることだけはないよう注意して。その行為をディーラーが“カードの強奪”と看做した場合、そのプレーヤーの最下位が決定してしまうもの。
作戦とそれぞれの動き、理解ができたかしら」
「——大丈夫か。吉田君や」
彼は理解している。作戦における自分の役割。そしてその先に、
それが桂木たちの寿命を奪うことであることも。ちゃんとわかっていた。
「迷うな」
「難しく考えることなどないのだ。
自分のすべきことは、もうわかっているはずだろう」
そのとき、
第15ゲーム、タテハvs吉田のゲームがまもなく始まる。
「行って来なさい」
そう言って
そしてタテハと吉田の両名が部屋を後にする。
「さっきの言葉は、激励かしら」
「それ以外に取れるか」
「どうかしら」
薄い微笑が
「あなたの言った通りよ。難しいことなんて考えなくてもいいの。
余計なことをしても自分が敗退するだけ。
そういう舞台をわたくしが作り上げたのだから」
「ああ」
「もちろん、ここの4人に作戦を破綻させるメリットもない」
「その通りだ」
「ここで多くのチップを増やさなくてはならないことを考えたら、儂が裏切る意味は何もない。
それが全てだろう」
言い切ってモニターへ視線を移す
多くのチップを増やさなくてはならない……。
「……そうね」
吉田の出した手は5。タテハの出した手は1。
打ち合わせ通り、吉田が5ポイントを減らしての決着となる。もちろん部屋に残り18枚のカードが部屋に残されている以上、波乱はあり得ない。
それでも
画面に映るタテハ・吉田の動きを注視し、観察を怠らない。それこそ瞬きのひとつも見過ごすことのないくらい、プレーヤーの動きはマークされていると見てよかった。
『それでは第16ゲーム。
ディーラーのコールを受け、
そしてその間も考える。果たして本当に、
あの桂木が、何も手を打たずに敗北を迎えることなどありうるか。
(それはあり得ないでしょう。
しかし辻と吉田はカードを管理され、決められたカードの他は手にできない状況。
そんな状況で、もしできることがあるとするなら)
桂木は手元にないはずのカードを
(できることがあるとするなら、正攻法ではない勝利)
そして閃く。自分ならどんな仕掛けを打つのか。
桂木の立場なら、
わかった。桂木が辻を送り込んだ理由。
2人を乗せたエレベーターが1階へ到着する。扉が開くと、15mほどの廊下がまっすぐに伸びている。
床には血のように赤い絨毯。
それを見つめ、思索を巡らす女は静かに微笑んだ。
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