第63話 天覧席

暫定スコア(指名順)


タテハ  12pt

つじ   12pt

御代   12pt

霧継きりつぐ  7pt

吉田 16pt

桂木 10pt

ミシロ 13pt



 ホールの全体を見下ろす一室。

 大きなマジックミラーの前に腰掛ける少女は、小さな唇にティーカップ当てつつスコアボードを見ていた。


「いよいよですねぇ。お嬢様」


 肩の辺りでゆるいツインテールを縛った半目の悪魔が、気だるそうに少女へ話しかけた。


「やっぱり霧継きりつぐでしょうかぁ。あのゲームに進めるのって」


 ……


「——まあ、そうでしょうね」


 少女のかわりに、少女の脇に控える悪魔が言葉を返した。


「個人としての力ならこのゲームに参加しているだれよりも上でしょう。

 それこそ私や貴女でさえ、彼女とはまともに渡り合えるかどうか」


「だよねぇ。わたしじゃちょっと無理だねぇ」


「しかし」


 部屋の左右にはめ込まれたモニターの一部が、プレーヤーの映像に切り替わる。


 そこには悪魔達が霧継きりつぐと同様に注目を向ける男の姿が映っていた。


「この桂木という男も中々のもの。

 あのフジウラとサクラミを撃破し、トラップルームでは霧継きりつぐと引き分けにまで持ち込んでみせた。


 勿論、現状は霧継きりつぐの優勢で揺るぎはないでしょう。

 

 けれどこの男もまたそんな逆境を何度も返してきた。


 蓋を開けるまで結末はわかりません」


「そぉかな。さすがに無理じゃないかな。


 やっぱり“最後の暇つぶし”の相手になれるのは霧継きりつぐさんしかないって思うなぁ」


「それは私達が決めるのではないこと。

 いかがでしょう。お嬢様」


 問いかけられた少女はやはり何も答えない。ただ小さく頷くだけの反応は返した。


 そして無造作に一枚カードを弄る。零ゲームで使われているものと同じカード。


 小さな手の中でスペードマークが踊る。

 少女は4のカードをくるくると回しながら、ほんの一瞬だけ、脇のモニターに映る桂木に目を向けた。



『20分が経過いたしました。

 それではこれより、零ゲーム最終ピリオドを開始いたします』



 ホールに、ディーラー“ルピス”の声が重く響いた。

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