第103話 るろうに剣心OVA『追憶編』とか『星霜編』とか

『るろうに剣心』のテレビアニメは1996年に始まって1998年に終わる。

まだ原作は終わっていなかったのだが。

およそ2年半放送したのだから、堂々とした実績である。


1999年にOVAが発売された。

これが『追憶編』全四巻。

原作の人誅編で剣心の過去話として語られた物語のみを取り上げた。

アニメのスタッフはテレビアニメと重なる人も多いのだが、作品は別物であった。

原作とテレビにおいてアクションはファンタジーである。

少年マンガちっくと言っても良い。

剣で切りあっても血が流れない。

何故か殴られたかの如く敵がぶっ飛ぶ。

こういったうそんこ演出を排して、流血や殺人シーンをリアルな演出で描いたのである。

これは話題になった。

テレビ『るろうに剣心』のファンでなかった人まで、なんかすげーらしーぞ、と噂になったのである。


ちなみに自分は噂を広めた側である。

まぁ、数少ない知り合いの中だけの話だけどな。

てな訳で機会があったら『追憶編』は今でも見て欲しい。

現在見やすいのは特別編と名のついた四話を二時間映画風にまとめた版だと思う。

これだと二時間休み無いのでちょい神経疲れるが、面白さは間違いない。


原作マンガとは若干ベクトルのずれた作品ではあるのだが、原作の人誅編じたい少年マンガにしては陰鬱な章である。

後に作られた実写映画『るろうに剣心 最終章』では。

原作マンガだけでなく、このOVAも原作として名を連ねている。

映画スタッフが見て、この作品に感銘を受けた、と言う事であろう。


過去のみを取り出した番外編みたいなものとして、原作テレビアニメファンにも納得のしやすい作品になっている。


それに対し、原作ファンだと納得しづらいのが『星霜編』である。

これは2001年に発売された。

『追憶編』が話題になったからとゆーのもあるだろうし、原作人誅編がアニメで描かれなかったからとゆーのもあるだろう。


これは『追憶編』を元とした派生作品とでもゆーか。

原作人誅編を粗筋的に映像化しつつ。

それ以上にその後のオリジナルストーリーに焦点をあてた異色の作品になっている。

ファンにも「ちょっと……」と眉をしかめる人も多い。

くろねこ教授も全面的にOKとは言えない作品なのだが。

ラストがさー。

すげぇんだよ。

あの力業の演出で持っていかれると、何も言えない。


桜の花びらが散って。

咳込みながら血を吐く剣心がいて。

何かを感じた薫がいて。

桜の下で出会う二人がいて。

「やっと消えたのね」と剣心の頬に触れる薫の指先があって。


もう完璧なのだ。

一個の到達点なのだ。

自分には文句をつける事が出来ない。


原作の和月先生はこんな風に言っている。

そこまで描いたか。

これは容赦なしだなと正直思いました。

このテーマを貫くならば゙死"と言う結末は避けられない。

けれどエンターテイメントの基本はやっぱり゙笑顔"でハッピーエンド。

古橋監督は前者を取り和月は後者を取った。

これはそういう事だと思います。


とゆー事で、これはこれで良い作品。


ただ、オススメはしにくい。

『追憶編』でもメインの作画監督であった松島晃さんがキャラデ作監してはいるのだが。

間に『ヤマモトヨーコ』や『HUNTER×HUNTER』を挟むせいか、だいぶ画のタッチが変わっている。

後の『マリア様がみてる』を連想させるタッチになってるんだよなー。

『追憶編』から派生しているのに『追憶編』と絵柄が違うのが……

アニメ化されてない人誅編をアニメで見たかったファンの期待で作られた部分も多かったはずなのに、人誅編は粗筋説明だけなんかいっ!

とか。

弥彦や剣心と薫の息子のエピソードとかも割と良いんだけどさ。

剣心が大陸に渡って病気を患い、馬賊みたいになってる左之助がそれを助ける、なんてのも味がある良いシーンなんだけどさ。

全部アニメスタッフのオリジナルであって。

原作マンガの方は本格的に北海道編書き出しちゃったから、もうただのパラレル番外編でしかないしー。


とそんな風にまとめると現在観賞する必然性は少ないと思える。

まぁ、気になる人。

古橋監督すっきやねん、と言う人は見てあげて欲しい。

個人的には好きなの、大好きなの。

だけど誰もが面白いと思うかは……自信が全然無いなー。



他にもOVAはあって。

『新京都編』

これはなぜ作られたのか良く分からないが、2011年急に前後編で作られた。

2012年に実写映画が公開されていて。

その宣伝やらなんやらが絡んでいたと思われる。

監督は同じ古橋監督だが、スタッフは一新。

萩原弘光さんがキャラデ作画監督。

なんだか美少女アニメっぽくなっていて少し違和感があったが、時代の流れかもしれない。



1996年版のテレビアニメの話も少し触れておく。

くろねこ教授は第43話『生と死の間で!奥義・天翔龍閃の会得』が大好きだ。

コンテ:遡玉洩穂、演出:清水明で作監:小林利充

遡玉洩穂さんは前にも書いた。

そだまもるほそだまもるほ……ほそだまもる。

細田守監督の別PN。

序盤の回想と同じBGMを繰り返し利用。

視聴者に覚えさせておいてのクライマックス。

笑いも入れつつ、池田秀一の美声が最後持っていく。

ス・テ・キ。


んでまー、令和版。

ここまではまぁまぁ良かったのかな。

キャストもスタッフも一新。

特に評判になるほどでもないが…………まずまず古いファンも新しいファンもついてるカンジ。

実写映画で知った人が、見てみよう、なーんて若い方もいるのかしら。

マンガテレビアニメだと省略されがちだった薫を丁寧に描いている感がある。

前回触れられなかったが、OP、EDのタイップも良いね。

『飛天』『切っ先』

『るろうの形代』『存在証明』。

菅田将暉と東京スカパラのタッグも面白い。

10月から続きやる筈だが……2クールか。

京都編だけで終わりかな。


人誅編はまた描かれず終い。

OVAだけのものになるのかな。

そんな事を気にしつつ。

令和版『るろうに剣心』を鑑賞したい。


以上、くろねこ教授でした。

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