第84話 『聖凡人伝』と『ガンフロンティア』とか

さて。

くろねこ教授です。


今回は松本零士先生の『聖凡人伝』『ガンフロンティア』を中心に語ろうかと。


『聖凡人伝』

『元祖大四畳半大物語』とホトンド変わらない4畳半モノではあるのだが。

くろねこ教授はこっちのが好き。

足立太が運も頭も悪いが、根性とやる気はあるのに対して。

『聖凡人伝』の主役、出戻始はやる気すらも無いのである。


一応就職先は探しているモノの毎回アヤシゲな仕事に関わっては、即クビになる。

挙句日本酒飲んで酔って寝てしまうのである。


なんでそれで生活が成り立つかと言うと。

始の住むアパートでは自殺が頻発していて。

このままじゃ誰も住まないと思った大家のバーサンが、始が出ていかない様に家賃を無料にして酒を差し入れたりしてるからなのである。

もうムチャクチャである。


連載序盤では、後で自殺してしまう美女と始が毎回エロ行為していたりもした。

やけくそだわとヒドイ事を言い出す女もいれば、最後にアナタと想い出をなどとキレイな事を言う女性もいたが、みんな死んでしまうのである。


そんなワケでメインヒロインが居ないと言うか、ヒロイン候補がドンドンお亡くなりになってしまうトンデモないマンガだったが。

中盤から早名礼子と言う女性が登場する。

イキナリ隣に出来たマンションのオーナー。

美貌で金持ち、最初は始とケンカしたりもしたのだが、途中からショッチュウ4畳半の部屋に出入りして酒盛りに加わり、いつの間にか始と同衾している。

オマケになんのつもりか始に就職の世話をしたりして、その就職先の男に引き換えに肉体を要求されて、許してしまったりする。

なんだって始のために、礼子がそこまでしなきゃイカンのかは永遠のナゾである。

後半になってくると濡れ場の必然性はもっとテキトーになってくる。

通りすがりのオヤジがイキナリ礼子を縛って好き勝手いたしていったりする。

そこで出戻始は出刃包丁持って男を追いかけるのである。

「テメ、クソ、殺す!」


どうだろう。

くろねこ教授が松本先生をカオスなマンガ家と言った理由が御分り戴けるであろうか。


『元祖大四畳半大物語』もだいたい内容は大きく変わらない。

大学進学を目指して東京に来た主役だが、結局ろくに勉強するシーンは無く、毎回バイトして事件に巻き込まれ酒飲んで寝る。

何故か知り合った美女と裸の関係になったりする確率は非常に高いのだが、その美女は金持ちやらハンサムと出来て逃げてしまうのである。


では何故くろねこ教授が『聖凡人伝』の方が好きかと言うと。

『元祖大四畳半大物語』のメインヒロインはジュンさん。

隣に住んでるヤクザの情婦であるのだが、なにかと主役と一夜を共にして。

ヤクザのジュリーにバレて、「テメ、殺す」的な騒ぎにもなるのだが。

ジュリーともなんだかんだ言いつつ友人になって、なかなか良いトモダチになってしまう。

ジュンは長い付き合いのジュリーと別れる気は無い。

ので友達の彼女としょっちゅう深い関係になってしまうワケで。

くろねこ教授は男友達の彼女とそーゆー関係になるのにかなり抵抗があるらしく、読んでいて落ち着かなかった。

故に『聖凡人伝』の方が好きだったと思われる。


松本先生はこういった4畳半モノを幾つも書いている。

主役がSF作家を目指していて、奥さんに生活費貰って暮らしてるみたいのも在った。

SFを書こうとするんだけど、ナゼか毎回ポルノ小説になってしまうみたいな。

アレはなんてタイトルだったかな。

中には4畳半日常モノと思わせておいて徐々にSFにシフトしていき、ついには人類全て異星へ移住と言う大展開を遂げる『ワダチ』なんて変わり種もあった。



『ガンフロンティア』

こちらは4畳半とは大違いのSF西部劇である。

主役はトチローとハーロック。

キャプテンハーロックとはスターシステム的な同じキャラでいて同一人物では無い。

トチローが活躍する作品は珍しいのでそれだけでも貴重かもしれない。


これもかなりカオスでムチャクチャな作品である。

日本人は死に絶えたと言われる世界でアメリカを彷徨う二人の男。

日本刀を使う近眼メガネ、トチロー。

銃の名手、ハーロック。

彼等に日本民族の情報を得るため近付いて来たシヌノラ。

どこの町に行っても、「黄色いサルめ、死ね」とか言われて襲われる。

ハーロックは銃で撃ち殺しまくるし、トチローも相手が女性だろうと何だろうと斬りまくるし、シヌノラはエロい。


シヌノラは……なんと言うか峰不二子的キャラとでも言うか。

仲間の様な、仲間のフリをしたスパイの様な、そのまたフリをした本当に仲間の様なフシギヒロインである。

ある時は傷ついたトチローを癒すため自分の肉体を差し出し。

時にはハーロックと関係を持ったりする。

それだけでなく日本人の情報を探ってる組織のエライ人が出て来ると、だいたいセクハラちっくにエロエロをされる。

トチローやハーロックに対しては自分から誘惑し、積極的に身を委ねる痴女風キャラなのだが。

オエライさんにはか弱くいたぶられるキャラとゆー。

複雑にエロ要素てんこ盛りなのである。


このマンガもなんかイロイロひどくて。

後半日本人の血を引いてる子供が数人仲間入りして。

騒々しくも楽しい雰囲気になった。

と安心するのも束の間、次の回には子供達みんな死んでたりする。


最後にはトチロー一人で小舟で荒海へと旅立つ。

ハーロックは外見上、日本人とバレずに暮らせるだろうと言うのだ。

自分も着いて行こうとするハーロックだがシヌノラに止められる。

「トチローの子供が私の体でおちくつまでおあずけよ」

いつの間にやらシヌノラはトチローの子を宿していたのである。

哀れハーロックは妊娠した女性を押し付けられ、置き去りにされるのだった。


とまぁカオスとゆーかムチャクチャとゆーかヒドいマンガなのだが。

松本零士先生のマンガ演出で巻紙でモノローグが入って。

「再び帰る事のない野心と男の生きがいが眠る所

 ガンフロンティア

 不滅の自由を男がうたいつづけた所

 ガンフロンティア

 さらば トチロー!

 さらば ハーロック!

 さよなら シヌノラ!

 今日も明日もオレの胸の中で

 ガンフロンティアの風が男の歌をうたいつづけるのだ」

 とか言われちゃうと哲学的な作品のような気もして来ちゃったりするのである。


これ、一応2002年にアニメ化されたりもしているのだが、アニメの方はエロや殺戮要素をかなり和らげた作品になっちゃってるんだな。


とゆー事で。

松本先生のメジャーな作品しか知らない人には驚くようなカオスな作品。

だが、くろねこ教授としては大好きな作品を紹介してみた。


他にも『昆虫皇帝』とか特殊な作品があるし。

『ダイバー0』も好き。

アンドロイドによって作られた、ただ一人の人間を殺せるアンドロイド。

それがダイバー0だっ!

みたいな。

「僕のお母さんは誰なんだ?」

「お前が遊んでいるそのボール、そのボールこそがお前の母親だっ」

とかメチャ良かった。

女性アンドロイドWG187233は電子頭脳と心臓部をまだ頭脳の無い0に差し出しそして0は産まれた。

女性アンドロイドはその残った部品を子供の遊び道具にして、と願ったのである。

他にもイロイロあるのだが、全部書いてたらキリが無い。

次回、『銀河鉄道999』に関して語りたい。


ではでは。

くろねこ教授でした。

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