421話 ガキンッ!

 メイドのネリス。

 20代後半にして、夫がいないらしい。


「ふうむ。その割には、ずいぶんと手慣れているじゃないか?」


「ありがとうございます」


 ネリスは嬉しそうな表情を浮かべる。


「誰か別の男と付き合っているのか? 例えば、結婚間近の彼氏とか」


「いいえ。あたくしにそのような方はおりません。ですが、男性とお付き合いしたことはありますわ」


「へぇ……。まぁそれも当然か。一体どんな奴だったんだ?」


「冒険者の方でした。パーティを組んでいましたが、実力不足ですぐに解散してしまいました。その後はソロで活動するも、いつの間にか音信不通に……。もう5年以上前になりますが……」


「そうなのか。悪いことを訊いてしまったな。すまない」


「いえいえ。大丈夫ですよ」


 ネリスは笑顔で言う。

 その顔は本当に気にしていないように見える。

 冒険者は、通常であれば過酷で危険な職業だ。


 一方で、俺が率いる『悠久の風』は、これまで順調に冒険者ランクを上げてきた。

 俺のMSCの知識と経験により、通常は取得が難しい魔法系ジョブなどもそれぞれ取得しやすい。

 ミッション報酬により、セカンドジョブやサードジョブが開放されており、複数のジョブの恩恵を受けることができる。

 『ジョブ設定』スキルにより、得たジョブは好きなタイミングで自由に入れ替えられる。

 『パーティメンバー経験値ブースト』により、ジョブレベルは簡単に上がる。

 俺たちにとって冒険者活動は楽なものだが、普通はもっと苦労するものなのだ。


「では、続きを始めましょうか」


「うっ……」


「うふふ。気持ちいいですか?」


「ああ、悪くない」


 俺は正直に答える。


「それは良かったです」


 ネリスは嬉しそうだ。

 やがて、限界が訪れる。


「それでは、こちらを清めさせていただきます」


「お、おい。そこまでしなくても……」


 俺は慌てて止めようとする。

 だが、ネリスは止まらない。

 その瞬間だった。

 ガキンッ!

 ネリスが勢いよく口を閉じたのだった。

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