396話 ガサツで乱暴な女

 俺はミルキーにアプローチをしている。


「どうした? 顔が真っ赤になっているぞ」


「ひゃいっ! な、なんでもねぇよ!」


「何でもないことはないだろう? 体調が悪いのか?」


「ち、ちげぇよ! そんなんじゃないんだ!」


「じゃあ、どうしてそこまで慌てる必要があるんだ?」


「うううううううううう」


 ミルキーは俯いてしまった。

 ちょっといじめすぎたかな?

 でも、ここで止めてしまうと、彼女が冷静さを取り戻してしまう。


「さっきも言ったが、ミルキーは可愛い。俺たち『悠久の風』の仲間になるなら、その可愛さを存分に発揮してほしいと思っている」


「か、かわ……」


「それで、想い人はいるのか?」


「そ、それはまだわかんねえよ」


「わからない?」


「ああ。今まで恋なんてしたことなかったからな。正直、自分の気持ちがよくわからん」


「そうか。なら、俺がミルキーの恋人に立候補しようかな」


 俺はさらりとそう告げた。


「えっ?」


「俺はミルキーが好きだ。俺が君を幸せにする」


「ええええええっ!?」


 ミルキーが仰天した声を上げた。


「どうだ? ミルキーは俺のこと嫌いじゃないんだろう?」


「き、嫌いじゃねーけどさ」


「だったら、好きになれる可能性はあるはずだ。そうだろ?」


「そ、そりゃそうだけどさ。でも、アタシみたいなガサツで乱暴な女なんかより、ミナの方がずっといいと思うぜ?」


 ミルキーがそう言う。

 ミナも結構ガサツで乱暴なところはあるのだが……。

 まぁ、それは置いておこう。


「ミルキー。君は自分がどれだけ魅力的な女性なのかわかっていないようだな。ガサツと言うが、それはミルキーの魅力のひとつでもある。俺はミルキーのそういうところが大好きなんだ」


「す、好き……っ!?」


「ああ。だから、俺の『悠久の風』に加入してくれないか? 今はまだ話せないこともあるが、あらゆる面でミルキーを幸せにすると誓おう」


 俺はAランク冒険者であると同時に、男爵位を持つ。

 収入面に全く不安はない。


 また、今回の『毒蛇団』の件が片付いたら、領地を開拓することになる。

 俺のチート能力を活用すれば、開拓も容易だろう。

 それがひと段落すれば、将来的な収入も安定する。


 そして忘れてはならないのが、俺のチートスキル『ジョブ設定』『パーティメンバー設定』『パーティメンバー経験値ブースト』などの存在だ。

 これらにより、ミルキー自身の能力もガンガン伸ばしていくことができる。

 ただし、そのチートを適用するためにはシステム上の条件がある。

 それは、俺と一定以上に深い仲になるということだ。


「どうだ? 考えてくれないか?」


 俺はさらに押す。

 ミルキーは想定以上に初心だし、押せば何とかなりそうだ。

 ここが頑張りどころである。

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