395話 ななな、何をいきなり

 俺は1人でミルキーの家を訪れた。

 そこで、彼女と話をしている。

 まずは、ミルキーが俺に抱いている印象を聞き出すことに成功した。


「へえ……。やっぱり言葉にされると違うな。ミナは本当に大切に思われているようだ」


 ミルキーは感心したように言う。


「ああ。ミルキーのおかげだ」


「何言ってんだよ? アタシは何もしてないぞ?」


「ミルキーがこの鍛冶場を守ってくれているからこそ、ミナは『悠久の風』に安心して加入できたんだ」


「それはそうかもしれないが、アタシはただ自分にもメリットがあるから引き受けただけさ」


「それが重要なんだ。ミルキーが頑張ってくれているから、俺もこうしてここに来ることができた」


「ふぅん?」


「これからもよろしく頼むよ」


「おう。任せときな!」


 ミルキーは胸を張って言った。

 こうして話をしていると、ミルキーは気の良い女性だということがわかる。

 ミナのこともちゃんと大切に思ってくれていることもわかった。

 これならば、話は早いだろう。


「ところで、本題なんだが……」


「ああ。何だい?」


「ミルキーには、想い人がいるのか?」


「ぶほっ!?」


 ミルキーが吹き出した。


「なっ、ななな、何をいきなり言い出してんだよ!?」


「いや、実は『悠久の風』は新メンバーを募集中なんだ」


「おう? そ、それがさっきの話と何か関係あるのかい?」


「ああ。できれば、ミルキーみたいな女の子に仲間になってもらいたいと思っていてな。だが、既に恋人がいる者を強引に誘うのは避けたい。そのための確認だ」


 グレイスは、黒狼団の頭目カイゼルの女だった。

 彼女については、俺の武力とテクニックで半ば無理やり奪ったような形となった。


 だが、一般人のミルキーにまで同じような態度で接することはできない。

 想い人がいる女性に強引に迫れば、問題が生じるリスクがある。

 ミルキーに好きな人がいるのであれば、事を慎重に進めるつもりだ。


「ア、アタシが……か、可愛い…………っ!!」


 ミルキーは顔を真っ赤にして、あたふたとしている。

 これは脈ありか?


「ああ。ミルキーは可愛い。これは揺るぎない事実だ。それがどうかしたか?」


 ミルキーは職人タイプの少女だ。

 短くボサボサの髪をしているが、よく見れば整った顔立ちをしている。

 背丈は低く胸も小さいが、体つきはしっかりしていて健康的だ。

 そして、性格は明朗快活。

 従姉妹のミナとの関係性も良好。

 ミルキーなら、俺たち『悠久の風』に加入してもやっていけるだろう。


「あぅ。ううぅ……」


 彼女は顔を真っ赤にして混乱している。

 結構初心なんだな。

 まぁ、ミナよりも年齢が低いようだし、それも当然か。


 ここは引き気味に……。

 いや、敢えて押しまくって、どさくさ紛れに了承してもらうか。

 ここが攻めどころだ。

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