372話 セリアは既に俺の女だ

「最後に、セリア。お前さんも同じくCランクだ。受付嬢を辞めるからには、『悠久の風』の一員として頑張ってくれよ」


 ギルドマスターがセリアに向かってそう告げる。


「もちろんですにゃ。よろしくお願いしますにゃ」


 セリアが笑顔でギルドマスターに応える。

 受付嬢は主に事務処理を行うのが仕事だが、それ以外にも仕事がある。

 例えば、今回の俺たちのように、迷宮内で行方不明になった者の捜索などだ。


 それに備えて、最低限の戦闘能力は持っていることを推奨される。

 セリアの場合は、受付嬢であると同時に、Dランク冒険者としても認められていたそうだ。

 それが今回、Cランクに上がったことになる。


「おめでとう、セリア。そして、改めて歓迎しよう」


 俺は彼女を抱擁し、祝福した。


「ありがとうございますにゃ、コウタさん。これから精一杯頑張りますにゃ!」


 セリアが俺の抱擁を受け入れ、強く抱きしめ返してくれる。


「ああ。期待している」


「はいにゃ!」


「……お前さんたち、そういう仲だったのか? いつの間に……」


 ギルドマスターが呆れ顔で言う。


「まぁな。セリアとは恋人同士だ。彼女が俺たちの捜索に来てくれたときに仲良くなったのさ」


「はいにゃ」


 俺とセリアは、それぞれ腕を組んで寄り添う。


「……つい最近じゃないか。手が早いな。ここを拠点とする冒険者には、セリアのファンも多かったのだが……」


「どうせ受付嬢も引退するし、関係ないだろう。セリアは既に俺の女だ。誰にも渡さん」


 俺はそう言いつつ、彼女の胸を揉む。


「にゃんっ。もう、コウタさんったら……。こんなところでダメですにゃ……。みんな見てますにゃん」


「ここには俺たちしかいないし、別にいいだろ」


「いや、俺もいるのだが……」


 ギルドマスターが気まずそうな表情をする。


「ああ、すまない。あんたのことを忘れていた」


「おい」


「冗談だ。それで、ギルドマスター。話を戻そう。俺たちの個人ランクは全て聞き終えたな」


 俺が条件付きAランク。

 シルヴィ、ユヅキ、ミナ、リン、ティータ、ローズがBランク。

 グレイス、エメラダ、セリアがCランクだ。


「うむ。全員がCランク以上の10人パーティで、リーダーはAランク。なかなかいないパーティだぞ」


「だろうね」


 人数が多いだけのパーティなら存在する。

 個人ランクがCランク以上の者も、国や大陸規模で見れば数え切れないほどいる。

 だが、Cランク以上の者が10人集って長期間同じパーティで活動することはほとんどない。


 なぜなら、それだけの人数を長期間に渡って維持するのは難しいからだ。

 高ランク冒険者を束ねるには、相応のリーダシップが必要だ。

 だから、Cランク以上が10人も集まったパーティというのは本当に少ない。


「これでお前さんたちの活躍が保証されたわけだ。さて、ここからが本題なのだが……」


 ギルドマスターは少しだけ真面目な雰囲気を出し、話を続けるのだった。

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