365話 開拓指令

 俺は大歓声に包まれながら、爵位を授かった。

 コウタ・エウロス男爵。

 それが俺の新しい名前だ。


 これからは、この国の貴族として生きていくことになる。

 貴族になれば、これまで以上に行動に気を付けなければならない。

 今までのように、好き勝手に生きることはできないだろう。

 しかし、俺の心の中には、確かな高揚感があった。


「ふぅーっ」


 俺は小さく息を吐いた。

 正直なところ、まだ実感が湧かないというのが本音だ。

 だが、これは夢ではない。

 現実なのだ。

 俺は自分のステータスを確認する。



コウタ・エウロス

種族:人族

称号:テツザン杯優勝者、ドラゴンスレイヤー、エルフの友、エルカ迷宮踏破者、サザリアナ王国男爵

ファーストジョブ:風魔剣士レベル5

セカンドジョブ:英雄レベル21

サードジョブ:格闘王レベル21

フォースジョブ:氷魔法使いレベル23

フィフスジョブ:火魔法使いレベル23

シックススジョブ:雷魔法使いレベル23

控えジョブ:風魔導師レベル30、剣豪レベル30、風魔法使いレベル30、剣士レベル30、格闘家レベル30、土魔法使いレベル23、鍛冶師レベル16、料理人レベル5、貴族レベル1


HP:B(25/30)

MP:A(15/100)

闘気:B(20/30)

腕力:A(01/100)

脚力:B(20/30)

器用:B(25/30)


システムスキル:

ジョブ設定

経験値ブースト

パーティメンバー設定

パーティメンバー経験値ブースト

魔石蓄積ブースト

レアドロップ率上昇


アクティブスキル:

『風魔剣士』ウインドカッター、エアバースト、ジェットストーム、メイクバキューム、トルネードランス、ラッシュ、ダブルラッシュ、スーパーラッシュ、ジャッジメントソード、ハイパーラッシュ、居合い切り、烈風一閃

『英雄』アクセル、エクスカリオン

『格闘王』裂空脚、砲撃連拳、鉄心、乱れ蹴り、爆撃正拳

『氷魔法使い』アイスショット、アイシクルスピア

『火魔法使い』ファイアーボール、フレイムアロー

『土魔法使い』クリエイトブロック、ロックウォール


パッシブスキル:

『風魔剣士』パーティメンバー回避力向上(大)、MP強化、詠唱時間短縮、MP強化、腕力強化、腕力強化

『英雄』全能力値上昇

『格闘王』脚力強化、アクティブスキル発動時間短縮

『氷魔法使い』MP強化

『火魔法使い』MP強化

『土魔法使い』MP強化

『テツザン杯優勝者』闘気上昇(小)、腕力上昇(小)、脚力上昇(小)

『ドラゴンスレイヤー』全能力値上昇(小)、対竜族攻撃力上昇、対竜属守備力上昇

『エルフの友』自然回復力向上、MP上昇(小)

『エルカ迷宮踏破者』全能力値上昇(小)、閉所耐性上昇

『サザリアナ王国男爵』全能力値上昇(小)、統率力上昇



 ジョブレベルなどに大きな変更はない。

 変わった点は、2つだけ。


 1つは、称号に『サザリアナ王国男爵』が加わったことだ。

 称号というよりは社会的地位のような気もするが、細かいことはいいだろう。

 パッシブスキルもあるし、あって困るものではない。


 もう1つは、控えジョブに『貴族』が加わったことだ。

 俺たち『悠久の風』の中では、ローズしか持っていなかったジョブだな。

 これは、文字通り貴族にしか与えられないジョブである。


 俺はアイゼンシュタイン子爵家の婿養子に内定していたが、まだ結婚はしていなかった。

 身分としては平民であり、当然『貴族』のジョブは未取得だった。

 それが今回、いきなり新興貴族の当主に任じられたことにより、ジョブが加わったのだ。 


「エウロス男爵よ。貴公に二つの命令を下す」


 ウルゴ陛下がそう言った。


「はっ」


 俺は大きく返事をする。

 今までの陛下と俺の関係は、一国の王と有力冒険者だった。

 それが今では、一国の王とその国に属する貴族だ。

 俺の立場自体は上がっているが、王との関係性だけに注目するなら、よりはっきりとした上下関係ができたと言っていい。


 冒険者は、その国が気に入らなければ拠点を移せばいい。

 しかし貴族になれば、簡単に逃げ出すことはできない。

 先ほど行った儀礼は、ごっこ遊びではないのだ。


「一つ目の命令は、新領地の開拓だ。このエルカの町より西に進めば、貴公も知っている通り、エルカ草原が広がっている。その奥にはエルカ樹海があり、その中にエルカ迷宮がある」


「はい」


 俺は素直に答える。

 地理においてはMSCの知識がほぼ役立たない。

 だが、陛下が言った程度の地理は一般民衆でも知っていることだ。


「エルカ樹海をさらに西に進んだ先に、何があるか知っておるか?」


「いえ、存じ上げません」


「ふむ。ならば教えよう。その先は未開の地が広がっている。開墾すれば、広大な農地となりうるであろう。そこをエウロス男爵家の領地とするゆえ、開墾に励め」


「はっ!」


 とりあえず元気に返事はしたけど……。

 開墾かぁ。

 あまり楽しそうではないな。

 開拓民を募集して、俺たち『悠久の風』の魔法やスキルを有効活用して効率よく進めたい。


 ちょうど、新しく得た『貴族』のジョブが役立つかもしれない。

 このジョブは戦闘向けではないが、内政を行っていく上で有用なパッシブスキルがたくさん習得できる。

 これからの開墾作業を考えれば、一時的にファーストジョブかセカンドジョブあたりと入れ替えて集中的にジョブレベルを上げていくのもありだな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る