366話 闇ギルド一掃指令

 新しく貴族となった俺に、ウルゴ陛下が2つの指令を下すと言う。

 1つは、俺に与えられる未開の領地を開墾することだった。


「陛下。それで、もう1つというのは?」


「うむ。それはな……」


「はい」


「このエルカの町に巣食う闇ギルドを一掃せよ、というものだ」


「え……!?」


 思いがけない言葉に、俺は思わず声を上げてしまった。


「どうした? 何か問題でもあるのか?」


「あ、いえ……」


「このエルカの町は、エルカディア侯爵が治める領に属する。領都ではないにもかかわらず、この発展ぶりは悪くない。だがそれゆえ、闇ギルドの温床となっているのが現状である」


 発展した町ほど、うまく立ち回ることで利益を得ることができる。

 そして、上手くやった者が富と権力を手にすることになる。

 領都であれば侯爵が目を光らせているのだろうが、離れた場所にある町までその目は届いていないようだ。

 その結果、力のある組織がのさばり、町の治安が悪化していく。


「特に最近の治安悪化は目に余る。聞けば、そこな少女も闇ギルドの画策により奴隷に堕とされたそうではないか」


 ウルゴ陛下がエメラダに視線を向ける。

 確かに彼女は闇ギルドの被害者の1人だ。

 毒蛇団からの借金に法外な利息を付けられたのである。


「特例で救ってやってもよいのだが、キリがない。こういうのは元を正さねばならん」


「はっ! 仰る通りにございます」


「エルカディア侯爵も精鋭を擁しておるが、王命にて別件を任せているゆえな。そこで、この町の問題は貴公に任せることにした。今後の隣人となるエルカディア侯爵に恩を売れるとなれば、貴公も損はあるまい?」


「はっ! 異論はございません」


 もとより、王命を拒否するなんて選択肢はない。

 ウルゴ陛下は、MSCには存在しなかった人物だからな。

 何が地雷になっているかわからん。


 話してみた感じでは結構普通のおじさんといった感じだが、ちょっとしたことで機嫌を損ねてしまう可能性も否定できない。

 そうなれば、末端貴族の俺などはあっさり処刑されてしまうことだろう。


 もちろん黙ってやられるつもりはないが、物量には勝てない。

 兵士を100人、1000人単位で向けられたらさすがの俺でも負けてしまう。

 ……まぁ、今の俺では、だけど。


「まずは、このエルカの町に存在する全ての闇ギルドを壊滅させよ。手段は問わぬ。エルカの町を、王国が誇る善良な者が集いし場所とするのだ」


「承知いたしました」


「期待しているぞ、エウロス男爵。余は王都に帰還し、朗報を待っておる」


 こうして俺は、闇ギルド狩りを行うことになったのだった。

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