333話 5階層へ到着
「よし! ようやく5階層に戻ってきたな!!」
「やりましたね!」
「ここまで来れば、少し気が楽になるね」
「やったのです!」
俺の声に呼応するように、仲間たちが声を上げる。
あれから順調に探索を進め、ついにここまで戻ってくることができたのだ。
「コウタさんは、ここの階層でトラップに引っ掛かったのでしたかにゃ?」
「ああ。一時はどうなることかと思ったよ」
「大変でしたにゃ。でも、ご無事で何よりですにゃ」
「みんなのおかげだよ。もし俺1人で転移させられていたかと思うと、ゾッとする」
チートを持つ俺でも、迷宮の深層に1人で飛ばされたらかなり厳しい。
「リンの料理には助けられた。閉塞感のある中でも暗くならずに済んだのは、リンのおかげだ」
「へへっ。そう言ってもらえると嬉しいよ」
リンは嬉しさを隠しきれない様子で、照れ笑いを浮かべる。
「ティータもありがとう。『結界魔法使い』のティータがいなければ、夜にぐっすり眠れずに体力を奪われ続けていたかもしれない」
「……コウちゃんやみんなの役に立てたのならよかった……」
ティータは穏やかな笑みをたたえて言った。
「ローズとエメラダにも感謝している。『治療魔法使い』のローズと『調合士』のエメラダのおかげで、ケガを過剰に恐れずに攻略を進めることができた」
「いえ……。わたくしなんて大したことはしてませんわ」
「……えっと。あたしもです。みなさんお強いので、出番はあまりありませんでしたね」
2人とも謙遜しているが、彼女たちがいなかったらダメージが蓄積され続け、いずれは力尽きていたはずだ。
「武器のメンテナンスは『聖鍛冶師』のミナ、トラップへの対処は『盗賊』のグレイスの存在が大きかったよな」
「コウタくんのためなら、これぐらい何でもないのです!」
「俺もだぜ。コウタ親分のために頑張るのは当然だからな」
2人がそう言ってくれる。
「そして、『氷魔導師』のシルヴィや『聖獣剣士』のユヅキの戦闘能力もありがたかったよ」
「ご主人様のお役に立てて光栄です!」
「僕の方こそ、コウタの存在には助けられたよ。ありがとう」
シルヴィとユヅキがそう言う。
実際のところ、様々なジョブを持ち、MSCの知識や経験もある俺の貢献度が最も高いだろう。
「ふふふ。どういたしまして。ま、リーダーの俺が頑張るのは当然のことだけどな」
そもそも冒険者として各地を回ったり迷宮に潜ったりしているのは、俺の意向を受けてのものだ。
奴隷のシルヴィ、元々冒険者だったユヅキ、元犯罪者のグレイスは、俺がいなくともこうした危険な活動をしていた可能性が高い。
しかし一方で、鍛冶師のミナ、料理人のリン、エルフ族で高い身分を持つティータ、アイゼンシュタイン子爵家の令嬢ローズ、調合士のエメラダあたりは、俺の意向さえなければ安全に生きていくことも可能なはずだ。
冒険者活動を主導している俺がみんなを守る必要がある。
「可愛いみんながいれば、やる気も出る。この調子で町まで無事に帰るぞ」
みんな俺の大切な仲間であり、家族だ。
こんな素晴らしい人たちと巡り会えたことに、心の底から感謝する。
俺はそんなことを考えつつ、歩みを進めていったのだった。
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