332話 黄金水の契約
「元気いっぱいになったですにゃ! 素晴らしい水をたくさんもらって、ありがとうございますですにゃ」
「いいってことさ。他ならぬセリアのためだからな」
「「「…………」」」
俺とセリアのやり取りに対して、シルヴィやユヅキたちが微妙な視線を向ける。
まあ、当然の反応か。
目隠し状態のセリアに、俺は黙って黄金水を飲ませた。
それも、セリアは俺のモノを直接口に含みながら、おいしそうにごくごく飲んでいた。
そんな光景を見て、彼女らがどう思ったかは想像がつく。
「あれは本当においしかったですにゃぁ……。町に戻っても、また定期的に譲ってほしいのですにゃ」
「え? あー、うん。いいよ」
「本当ですかにゃ!? 嬉しいのですにゃ!」
俺が快諾すると、セリアは尻尾をピンと立てて喜んだ。
「ただし、条件がある」
「…………?」
「あの水は保管に気を配る必要があってな。特別製の水筒で飲む必要がある」
「へえ。そんなのがあるんですかにゃ……」
「ああ。それに、あの水は貴重なものでね。『悠久の風』以外の者にその存在を知られたくない。だから、また飲むのであれば、俺たちしかいないときに、目隠しをして飲んでもらうことになるけど……それで構わないか?」
「もちろんですにゃ! ありがとうございますにゃ!」
「それじゃあ、町に戻ったらまた飲ませてやろう。楽しみにしておいてくれ」
「はいですにゃ!」
話はまとまった。
これで、何も知らないセリアに俺の黄金水を定期的に飲ませる契約が成立した。
「「「…………」」」
俺とセリアのやり取りを見て、ミナやリンたちがものすごく微妙な視線を向ける。
彼女たちが言いたいことはわかる。
だが、俺はあえてそれには触れずに話題を切り替える。
「さあ、セリアも元気になったことだし、そろそろ出発しようか」
俺はセリアの背中を押して立たせると、移動を促す。
「はいですにゃ。コウタさんたちはお疲れでしょうし、私が戦うのですにゃ」
「セリアは戦えるのか?」
「もちろんですにゃ。初級の水魔法の他、槍術も修めているのですにゃ」
「ほう。それは心強いな」
俺は素直に感嘆の声を上げる。
セリアは冒険者ギルドの受付嬢だ。
その事務能力は高いし、見目も麗しい。
それに加えて、魔法や槍まで使えるとは思わなかった。
「セリアさん、無理はしないでね? まだ体調が完全に戻ったわけじゃないんだから」
「わかっているのですにゃ。でも、本当に大丈夫なのですにゃ」
ユヅキの言葉に、セリアは笑顔で返す。
「よし、では油断せず戻ろう。みんなも気を引き締めていくぞ」
「承知しました!」
「了解なのです」
「へへ。わかったぜ!」
こうして、俺たちはエルカ迷宮から地上に向けて戻り始めたのだった。
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