241話 黒狼団の引き渡し

 アルフヘイムの隣町の冒険者ギルドにやって来た。

 黒狼団を捕らえたことを報告したところ、受付嬢がギルドマスターを呼んでくれたところだ。


「おお! 君たちが黒狼団を捕まえてくれたのか!」


「ああ。ま、俺たちはBランクパーティ『悠久の風』だからな。当然だ」


「なるほど……。あの新進気鋭のパーティか。ということは、君がコウタ君だね?」


「その通り。俺がコウタだ」


「私はここのギルドマスターを務めている者だ。よろしく頼むよ」


「こちらこそ、よろしく」


 俺は差し出された手を握る。


「それで、黒狼団についてだが。奴らはこの町の近くを拠点に活動していたんだ。この町にもこれまでに大きな被害が出ている。感謝してもしきれないくらいだよ」


「そうなのか。それはよかった」


「ああ。無事に生け捕りにしてくれたので、尋問すればアジトの場所もわかるだろう」


「存分に尋問して、情報を引き出してくれ。それじゃ、さっそく報奨金を用意してもらえるかな」


 俺はギルドカードを取り出した。


「わかった。すぐに賞金首の奴らを照会して、用意させよう」


 ギルドマスターの指示の下、職員たちが手配書との照合を進めていく。


「ふむ。頭領カイゼルの他、幹部クラスも揃っているな。……よし、連れていけ!」


 ギルマスが職員にそう指示を出す。

 黒狼団の面々が、ギルド職員によって連れ出されていく。

 衛兵に引き渡すのだろう。

 俺はそれを満足した表情で眺める。

 そしてギルマスはカウンターの奥に入ると、お金の入った袋を持って戻ってきた。


「これが黒狼団の報奨金だ。主に頭領カイゼルの懸賞金だが、それ以外の幹部メンバーにも賞金が掛かっている。合わせて金貨100枚以上になる」


 俺は大金が入った袋を受け取る。


「ありがとう。助かるよ」


「いやいや。町の平和を守ってくれたことへの報酬なんだから、気にしないでくれ」


「そうか。なら遠慮なく貰っておく」


 これで、『悠久の風』の資産は一気に増えたことになる。

 今後、ますます活躍できるだろう。


「ところで、グレイという少年は知らんか? 頭領のお気に入りだったらしいのだか、先ほど引き渡してくれた奴らの中にはいなかったようだ」


 ギルマスが言っているのは、間違いなくグレイスのことだろう。

 実際には少年ではなく少女だが。


「グレイ? ……はて、聞いたことがない名前だな」


 俺はとぼける。

 グレイスは俺の女にしたことだし、みすみす町に引き渡す必要はない。


「そうか。知らないのであればいい」


「力になれなくて申し訳ないな」


「いや、構わないさ。頭領や幹部メンバーは全員捕らえることができたんだ。それだけでも十分すぎる成果といえる。構成員が多少生き延びたところで、大したことはできないだろう」


「そう言ってくれるとありがたい」


「それにしても、まさか黒狼団を1パーティが壊滅させるとはな。ランク査定にも大きな影響があるぞ」


「期待しておく。さっそく上がりそうか?」


 俺はギルマスにそう問う。


「いや、魔物の討伐とは違い、盗賊団の捕縛に対する功績の査定は多少の時間がかかる」


「そうなのか」


 このあたりは、MSCとは異なる点だな。


「他の町に移動する予定があるのか? 別に移動してくれてもいいぞ。功績は他のギルドとももちろん共有するからな」


「分かった。そうさせてもらおう」


 俺たち『悠久の風』のランクアップ報告を聞くのは、エルカの町でになりそうだ。

 それはそれとして……。


「黒狼団の話はこれぐらいか? 続いて、このギルドで処理しておきたいことがある」


 俺は話を切り上げ、別の話題へと持っていったのだった。

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