240話 冒険者ギルドへ

 アルフヘイムを出発して数日後。

 隣の町に到着した。


「ここはアイゼンシュタイン家が治める町の1つですわね。何度か視察に来たことがありますわ」


 ローズがそんなことを言う。


「へえ。なら、とりあえず冒険者ギルドに案内を頼む。黒狼団を引き渡して、早く身軽になろう」


 ちゃんと拘束しているとはいえ、ふとした拍子に逃げられる可能性もある。


「それがよろしいでしょうね。案内しますわ」


 ローズがそう答えると、先頭に立って歩き出した。


「……」


 その後ろ姿を見ながら、俺は考える。

 今はまだ昼過ぎだ。

 黒狼団の引き渡しが終わったら、さっそくみんなと盛大に楽しもうかな。


「こちらですわ」


 そうこうするうちに、目的地に着いたらしい。

 大きな建物の前で立ち止まると、ローズは扉を押し開け中へと入っていく。

 俺も後に続いた。


「お疲れ様です。少しよろしいでしょうか?」


 ローズが受付嬢に声をかける。


「おや? これは、ローズ様ではありませんか。どうなさいましたか?」


 声をかけられた女性職員が応じる。

 ここはアイゼンシュタイン家の領地内ということもあり、ローズの顔を知っていたようだ。


「実は、黒狼団という盗賊たちを捕縛いたしましたの。引き取っていただけないかしら」


 ローズはそう告げると、後ろ手に縛られた男たちを指差した。


「なっ!? あの悪名高い黒狼団ですか? ……確かに、先頭の男は手配書の顔と同じですね」


「ええ。間違いありませんわ。この者たちを引き取ってくださいまし」


「承知致しました。では、手続きを行なっていきましょう。まずは、当ギルドのギルドマスターを呼んできます。少々、ここでお待ち下さい」


 女性はそう言うと、奥の部屋に入っていく。


「ふう。これでひと安心だ」


 俺はほっとして息をつく。


「ご主人様の名声も、さらに高まることでしょう!」


 シルヴィが目を輝かせながら言う。


「そうだね。でも、僕も少しは活躍したかったな」


 ユヅキが残念そうに言う。


「仕方ないのです。コウタくんの邪魔にならないよう、あの場はああするしかなかったのです」


「へへっ。せっかくテツザンで鍛錬したのに、活かしきれなかったぜ」


 リンがそう言って肩をすくめる。


「みんな、そんなことはないぞ。ゴブリンの大群は確かに俺が蹴散らしたが、その前の黒狼団との戦いはなかなかのものじゃないか。みんながいなければ、もっと大変な戦いになっていた」


 俺は彼女たちの頭を撫でつつ、そう褒めてやる。


「ふふっ。コウタ殿のお役に立てたようで何よりですわ」


 ローズが笑顔で言う。


「……まあ、そういうことにしておこうかな。ティータもまだまだ上を目指すよ……」


 ティータがそう決意を表明する。


「ギルドマスターをお連れしました!」


 そうこうしている内に、先ほどの女性職員がギルマスを連れて戻ってきたのだった。

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