206話 謎の少年グレイ
アルフヘイム周辺の森で、少年を介抱した。
彼がなぜ森で倒れていたのか、事情を聞いているところだ。
「話したくないことなのか?」
まさか、良くないことをしていたとか?
「い、いや……。そう。薬草を採取していたんだよ。気が付いたら森の奥深くにいたから、慌てて帰ろうと思ったんだけど……」
「何か問題が?」
「だんだん気分が悪くなってきて、倒れてしまったんだ。このままじゃ親分たちに怒られる……」
少年がそうこぼす。
「気分が悪くなる、つまりは魔力酔いだな」
俺は推測を口にする。
魔力濃度の高い場所に、魔力保有量が低い者が長時間滞在した場合、酔ったような状態になることが多い。
特に子どもの場合は顕著である。
「魔力酔い……?」
少年は聞き慣れない言葉に疑問符を浮かべた。
「ああ。魔力を豊富に持つ場所に長時間いると、魔力にあてられて身体が弱ることがある。お前も、この森が高濃度の魔力で満ちているのでその影響が出ているんだと思う」
「そんな……」
少年が肩を落とす。
「まぁ、気に病んでいても仕方がない。これから気をつければいいさ」
「……」
元気づけようと声をかけてみたが、返事はない。
代わりに、じっとこちらを見つめてくる。
「どうした?」
「あんた、すごいんだな」
「ん? どうしてだ?」
「いや、普通は魔力酔いなんて知らないだろ? なのに、まるでそれが当たり前のように説明できるじゃないか」
「そうか? これぐらい常識の範囲内だと思うが……」
俺はそう言う。
「いや、あたいも聞いたことがなかったぜ」
「わたしも知りませんでした。ご主人様は物知りですごいです!」
リンとシルヴィまでもがそう言う。
あちこちを旅する冒険者ならまだしも、町民や村人なら知らなくてもおかしくないか。
「……魔法適性が低者、特に子どもや体格の小さい者は、この森で体調を崩しやすい。君はアルフヘイムに来ない方がいいかも……」
ティータが心配そうに声をかける。
「だ、大丈夫だ。何とかなる。ぜひ連れて行ってくれ」
少年がそう言う。
アルフヘイムになかなかの執着心を持っている。
俺は彼の意思を尊重し、同行を認めることにした。
「それじゃあ、行くか」
「……わかった。戻ろう……」
俺たちはティータの案内に従って歩き出す。
少年も後を付いてくる。
「そういえば、お前の名は?」
「俺か? 俺の名はグレイだ。よろしくな」
ちょうど服装も灰色を基調としたものだし、少し覚えやすいな。
「そうか。改めて、俺はコウタ。こっちから順にシルヴィ、ユヅキ、ミナ、リン、ローズ、そしてティータだ」
俺は簡単に自己紹介をする。
そして、アルフヘイムへ向かっていったのだった。
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