169話 ブラックワイバーン討伐

 俺たちがピンチに陥っていたとき、ローズが戻ってきて治療魔法を掛けてくれた。


「お父様たちの撤退は無事に完了しました! 皆様も早く撤退を!」


「いや、まだこいつを倒せていない」


「ですが……」


 ローズが心配そうな顔になる。

 だが、リンだけは余裕の表情を浮かべていた。


「へへっ……よく見ておくといいぜ」


 リンは再び跳躍し、今度は尻尾に向かって攻撃を仕掛ける。


「くらえぇっ!」


 鋭い蹴りが、ブラックワイバーンの尾に当たる。


「グオオッ!?」


 奴が苦悶の声を上げる。


「おっしゃああぁ!」


 彼女がさらに連続でキックを食らわせていく。

 やがて、翼竜の巨体がぐらついた。


「……ウッドランス!」


 そこへティータの木属性魔法が加わる。


「グオオォッ!」


 ついに、奴は大きく体勢を崩した。


「……みんな、今がチャンスだよ……!」


 ティータの言葉とともに、ミナが翼竜に駆け寄っていく。

 手には巨大なハンマー。


「これで決めるのです!」


 ゴオオッ!

 ミナのハンマーに気功が込められていく。


「ビッグインパクト!!」


 ドオオンッ!

 彼女の渾身の一撃が炸裂する。


「グオオオォ!!!」


 翼竜は叫び声を上げる。

 俺も追撃するぞ。


「くたばれ! ジェットストーム!」


 俺は嵐を巻き起こす。


「ギシャアアァ……!」


 翼竜は断末魔のような鳴き声を上げて倒れた。

 こうして、俺たちは見事にブラックワイバーンを倒したのだった。


「ふう、なんとか終わったね」


「そうだな。一時はどうなることかと思ったが」


 俺たちは、戦闘が終わったことで安堵していた。


「へへっ、どんなもんだ!」


 リンは得意げになっている。


「す、すごい……。ブラックワイバーンを倒すなんて……」


 ローズは信じられないといった様子だ。


「……無事に因縁の相手を倒せた。コウタちゃんたちのおかげ……」


 ティータがそう言う。


「あ、あの、ありがとうございます! 皆さんのおかげで助かりましたわ」


 ローズが気を取り直して、俺たちに礼を言う。


「いや、いいってことさ」


 俺は照れながら答えた。

 するとそこにユヅキが近づいてきた。


「コウタ、大丈夫?  怪我とかしてない?」


 彼女は少し不安そうな顔をしている。


「問題ない。途中でローズが治療魔法を掛けてくれたしな」


 俺はそう言って笑って見せた。


「よかった……」


「それよりユヅキは大丈夫か? 他のみんなも」


「僕は大丈夫だよ」


「わたしも平気です」


 と、シルヴィ。


「ボクも大したことないのです」


 ミナは笑顔で答える。


「あたいもだ。ちょっと痺れたくらいだからな」


 リンは元気そうにしている。


「……ティータも大丈夫。みんな無事でよかった……」


「そうですわね。撤退のお手伝いのために戻ってきただけでしたが、思わぬ成果です。お父様も喜ばれるでしょう」


 ローズは満足そうな笑みを浮かべている。

 こうして、俺たちの戦いは勝利に終わったのだった。

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