168話 vsブラックワイバーン

 ブラックワイバーンとの戦いが始まる。


「グオオオッ!」


 俺たちが近づくと、奴は大きな雄叫びを上げた。


「来るぞ! 気をつけろ!」


 俺はそう注意を促す。

 次の瞬間、奴はこちらに向けて口から炎のブレスを放った。


「くそ! 避けきれねえ!」


「ロックウォール!」


 ユヅキが咄嵯に防御魔法を唱える。

 俺たちの前に石の壁が出現して攻撃を防いだ。


「助かった! ナイスだユヅキ!」


「いや、これも長くは持たないよ!」


 ユヅキが叫ぶと同時に、壁が崩れ去る。

 ちょうどブレスと相殺できたぐらいか。

 次の手は……。


「アイスストーム!」


 シルヴィの氷魔法が放たれる。


「ギシャアッ!」


 翼竜は悲鳴を上げながら、大きく身体を仰け反らせた。


「今だ! うおおおっ!! ダブルラッシュ!!」


 俺は素早く間合いを詰めると、思い切り斬りつける。


「ギャアァッ!」


 体を斬りつけられた痛みで、奴は再び大きな鳴き声を上げた。

 よし、効いてるぞ。

 俺たちはそのまま攻撃を続けて、翼竜を追い詰めていく。

 だがその時だった。


「ガオオォン!!」


 ブラックワイバーンが大きく翼を広げながら、天高く吠えたのだ。


「なんだ!?」


 すると突然、黒い雲のようなものが現れた。

 それは瞬く間に広がっていき、辺り一面が真っ暗になる。


「これは……まさか、雷か?」


 俺はそうつぶやいた。

 ブラックワイバーンの中には、強力な電気を操る個体がいる。

 MSCではそうだった。

 こいつもそうかもしれない。


「みんな! 早く離れるんだ! 感電するぞ!」


 俺がそう呼びかけるが、既に遅かった。

 バリバリッ!!!

 凄まじい音がして、稲光が走った。

 そして……一瞬にして視界が白くなる。


「ぐあああっ!」


 全身に強烈な電流が流れ、その場に倒れ込んだ。

 ……意識が遠のいていく。

 まずい……このままじゃ、本当に死ぬ。

 そう思っていた時だ。


「へへっ! 雷相手なら、あたいに任せてくれよ」


 リンがそう言う。

 雷魔法使いの彼女には、雷耐性がある。

 この雷撃も無事に耐えていたようだ。


「いくぜっ! 裂空脚!!!」


 リンが蹴りを放つ。

 だが、その一撃はあまりダメージを与えていないように見えた。


「ちっ! 固いな……」


 リンは舌打ちをする。

 だが、翼竜の動きの邪魔はできている。

 この間に何とか態勢を整えるんだ。

 俺がそんなことを考えていたときだった。


「ヒール!!」


 俺たちを光が包み込む。

 おかげで、動けるまで回復した。


「これは……」


「コウタ殿! それに皆様! ご無事ですか!?」


 ローズだ。

 戻ってきてくれたのか。

 結構危ないところだったので、助かった。

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