160話 コウタ殿を打ち首に……

「ううっ! こんなはずでは……。コウタ殿に依頼をしに来ただけでしたのに……。かくなる上は、お父様に言ってコウタ殿を打ち首に……」


 ローズが物騒なことを言っている。

 ひえっ。

 やはり貴族の娘に安易に手を出すものではないな。

 どうにか言いくるめよう。


「俺の嫁にしてやるから、それで満足しろ。それに、俺に依頼とやらがあるのだろう? それを受けてやろうではないか」


 俺はそう提案する。


「本当ですの?」


 ローズが顔を上げる。


「ああ、もちろんだとも」


 俺は笑顔で答える。


「……まあいいでしょう。過ぎたことをクヨクヨしていても仕方ありませんものね」


 ローズが納得してくれたようだ。

 意外にあっさりだ。

 まあ、最後の方は彼女も相当に楽しんでいたしな。


「では早速、依頼を受けてもらいましょうか」


 彼女はそう言うと、俺の手を取って立ち上がらせた。


「まずはわたくしの滞在先に案内致しましょう。ティータ殿、それにコウタ殿のお仲間の皆様もご一緒にどうぞ」


 ローズがそう言って微笑んだ。

 そして、俺たちは身支度を整えて宿屋を出発するのだった。

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