161話 アイゼンシュタイン家の屋敷へ

「ここがわたくしの別荘でございますわ」


 ローズに連れられてやってきたのは、テツザンの中心部にある豪邸であった。

 屋敷の敷地を囲むように高い塀があり、正門には門番までいる。


「随分と立派な屋敷だな」


 俺は率直な感想を述べる。


「ありがとうございます。このテツザンは、我がアイゼンシュタイン家の領地でして、領主である父もたまに視察へ来られるのです」


「なるほど」


「さあ、中に入りましょう」


 ローズが扉を開けて中に入るよう促す。

 俺たちはその後に続いて入っていった。

 玄関ホールに入ると、メイド服を着た女性が出迎えてくれた。


「おかえりなさいませ、お嬢さま」


「ただいま戻りましたわ。この方々をお連れしましたので、部屋へ案内してください」


「かしこまりました」


 女性は一礼し、俺たちを応接室へと案内してくれる。

 その途中、使用人たちが慌ただしく行き来している様子が見えた。


(何かあったんだろうか……?)


 俺は疑問に思う。

 やがて、俺たちは豪華な装飾が施された部屋に通された。

 ソファやテーブルなど調度品はどれも高級そうに見える。


「ここが応接室です。ここでしばらくお待ちください」


「わかった」


 俺がそう返事すると、ローズとティータは部屋を出ていった。

 俺たち『悠久の風』だけが部屋に残される。

 とりあえず椅子に座って待つことにした。

 …………。


「お待たせしましたわ」


 しばらくして、ローズとティータが戻ってきた。


「待たせてしまってすまないね」


 加えて、見知らぬ男性も一人いる。

 年齢は40代後半くらいだろう。

 貴族風の服装をしている。


「はじめまして。私はこの街の領主を務めているクラウス・フォン・アイゼンシュタインという者だ」


 男性は自己紹介をした。


「これはわざわざご丁寧に。俺はコウタだ」


 俺は立ち上がり、そう挨拶をする。


「今日は突然の訪問に対応していただき感謝する」


 クラウスがそう言う。

 この様子だと、俺が強引にローズの体を堪能したことはバレていないようだな。

 怖い怖い。

 一歩間違えれば死刑になるところだったぜ。


「それで、話というのは?」


 俺はローズに尋ねる。


「えっと……」


 ローズが言い淀む。


「実は、街の付近で魔物が大量に発生しているのだ」


 代わりに答えたのはクラウスの方であった。


「魔物が?」


「そうだ。幸いにも今のところ人的被害は出ていないのだが、このままではいずれ街に危険が及ぶかもしれない」


「確かに……」


「そこで、あなたたち冒険者に討伐の依頼を出したいと考えている」


 クラウスがそう申し出る。

 魔物の討伐は、俺たち冒険者の本分だ。

 金稼ぎにもなるし、ジョブのレベルアップにも繋がるし、冒険者ランクの上昇にも繋がる。

 引き受けることは問題ない。

 詳細を詰めていくことにしよう。

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