120話 宿屋の食堂にて

 高級宿で、貸切風呂の予約をした。

 予約した時間まで、まだまだ時間がある。


「先に夕食をとっておくか」


「賛成なのです」


「では、食堂へ行ってみましょう」


 俺たち5人は、宿屋の廊下を歩いていく。

 やがて、目的の食堂へとたどり着いた。


「うわー。おいしそうな匂いが漂ってるのですよ」


「ほんとですね。食欲をそそります」


 シルヴィの口からよだれが垂れそうになっている。


「それなら、早く食べちまおうぜ。風呂に入る前に腹が減って動けなくなったら困る」


「そうですね。それに、ご主人様にお見せする大事な体ですものね」


 シルヴィがそう言う。

 やはり、俺もいっしょに入っていいようだな。

 楽しみだぜ。


「デザートもあるみたいだね。楽しみだよ」


「ボクもなのです。甘いものは別腹なのです」


 ユヅキとミナがそう言う。

 みんな、早くも食事のことばかり考えているようだ。

 食堂に来たので当たり前ではあるが。


 俺たちはそんな会話をしながら、席に着く。

 メニューを見ていく。


「それじゃあ、注文してしまおうか。みんな、何にする?」


「僕は『本日のオススメディナー』かな」


「あたいもそれにするぜ。せっかく見知らぬ町に来たんだから、ご当地のオススメを食べておかないとな!」


 リンがそう言う。

 結局、その言葉につられて全員がそれにすることになった。

 俺は近くにあったベルを鳴らす。

 すると、すぐに従業員らしき女性がやってきた。


「はい。何に致しましょうか?」


「えっとだな。この『本日のオススメディナー』というやつを人数分頼む」


「かしこまりました。少々お待ち下さい」


 そう言うと、女性は厨房の方に戻っていった。


「楽しみだね」


「ああ。どんな料理が出てくるのか気になるところだ」


「ボクもすごく興味があるのです!」


 それから10分ほど待つと、料理が出てきた。


「お待たせしました。『本日のオススメディナーセット』です。メインディッシュはミドルボアの肉となっています。ごゆっくりとお召し上がりください」


 テーブルの上に並べられたのは、豪快な肉料理。

 そして、パン、サラダ、スープであった。


「おお! うまそうだな」


「うん。これは期待できそうだね」


「早速食べるのです! いただきます!」


 ミナが勢いよく食べ始める。

 それを見て、シルヴィやユヅキ、そして俺も食べ始める。

 最初からメインディッシュの肉に手を出す。

 いきなりステーキだ。


「うまい!」


「美味しい!」


「最高なのです!」


 俺、ユヅキ、ミナが口々にそう言う。


「ああ。まったりとしていて、それでいてしつこくねえ。この味付けの秘訣は何だ……?」


 リンがそんなことを呟きながら食べる。

 それを横目に見つつ、俺も夢中で平らげていく。

 そしてしばらくして——


「ふうっ。食った、食った」


「満足したのです」


「ご馳走様でした」


 ミナとシルヴィが満足気にお腹をさする。

 満腹になった俺たちは、すっかりリラックスモードに入っていた。


「では、最後にデザートとなります」


 女性の給仕係が現れ、俺たちの前にカップを置く。

 中には真っ赤な液体が入っていた。


「なんだ? これ」


「当店特製のベリージュースになります」


「なるほど。これも名物の1つか」


「はい。甘酸っぱくてとてもおいしいですよ。それでは、ごゆっくりどうぞ」


 女性は厨房へと戻っていった。

 俺たちはベリージュースを堪能する。


「これもなかなかいけるな」


「うん。ちょっと癖になりそうだよね」


「はい。喉越しもよくて、いくらでも飲めてしまいます」


「ボク、もう一杯飲みたいのですよ」


「あたいもだ」


 5人でわいわい言い合いながら飲み進める。

 あっという間に空になってしまった。


「さて、それじゃそろそろ風呂に行くか」


「そうだね」


「ごちそうさまでした」


「おいしかったのです」


「また来ようぜ」


 俺、ユヅキ、シルヴィ、ミナ、リン。

 みんなで食堂を出て浴場へと向かう。

 いよいよ、お楽しみの時間だ。

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