118話 高級宿

 武の名地テツザンに到着した。

 まずは旅の疲れを癒やすため、宿屋まで来た。

 少し高いが、良質な宿屋をアーノルドに紹介してもらったところだ。


「うっ! コウタ兄貴はすげえぜ……。俺たちには尻込みしちまう値段だ」


 ユーヤがそう言う。


「仕方ねえな。ユーヤには、また別の宿屋を紹介してやるよ。コウタたちはこの宿に泊まるんだな?」


「ああ。そうだな」


「では、また明日の朝にこの宿屋の前で集合しよう」


 アーノルドがそう言う。


「了解だ」


 俺はそう返答する。

 そして、ユーヤやアーノルドたちはまた別の宿屋に向かっていった。


 俺たち『悠久の風』は、宿屋の中に入る。

 受付には従業員の女性がいた。


「いらっしゃいませっ! 初めてのお客様ですね?」


「ああ。今日からしばらく泊まりたいのだが」


「はい! では、宿泊される人数をお聞きしてよろしいですか?」


「俺を含めて5人だ」


「かしこまりました。5名様ですと、ちょうど大部屋が空いておりますが」


「それでいい。みんなもいいよな?」


 俺は一応、そう確認する。

 男と同部屋は、もしかすると嫌がるかもしれない。


「もちろん問題ありません!」


「今さら気にする仲でもないしね」


 シルヴィとユヅキがそう答える。

 ミナとリンも異論はないようだ。

 エルカの町で、少し深い仲になっておいてよかったな。

 こういうときにも利便性がある。


 それに、みんなと同じ部屋ということは……。

 ぐふふ。

 『例のジョブ』の取得も現実味を帯びてきたな。


「宿泊代金は一泊あたりこちらになっております。何泊なさいますか?」


「そうだな。とりあえず2泊分で頼む」


 俺は女性に代金を支払う。

 俺たち『悠久の風』のパーティ資金はそれなりに潤沢だ。

 もう少し前払いしておいてもいいが、まだこの武の名地とやらにおける予定が定まっていないからな。

 場合によっては、さっさとエルカの町に引き返すこともなくもない。

 随時代金を払っていくのがいいだろう。


「はい、確かに。では、お部屋のほうへご案内いたしますね」


 俺たちは廊下を歩いていく。

 やがて、大部屋にたどり着いた。


「こちらのお部屋になります」


「おお! すげえな!」


「広くて快適そうなのです」


「これはなかなか」


「素敵ですね」


 リン、ミナ、ユヅキ、シルヴィ。

 それぞれが口々に感想を言う。


「それでは、ごゆっくりどうぞ~」


 女性はそう言って去っていった。


「さて、早速くつろぐとするか」


 5人で寝転んでも余裕があるような大きなベッドを中心に、ゆったりとした空間が広がっている。

 俺はソファに腰掛ける。

 なかなか質のいいソファだ。

 これなら、快適な滞在になりそうだな。

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