117話 テツザンに到着

 エルカの町を出発して5日ほどが経過した。

 そしてついに、テツザンに到着した。


「おおーっ!!」


「すごいです!」


 俺やシルヴィをはじめ、みんな初めて見る光景を前に感動している。

 テツザンは、広大かつ雄大な自然に囲まれていた。

 町の周囲は高い壁で囲まれており、中へ入るには門から入るしかないようだ。


「これが武の名地か……。強い人がたくさんいそうですぜ、アーノルドの兄貴!」


「ああ。ここに滞在している連中のレベルは高いぞ」


 ユーヤが感嘆の声を上げ、アーノルドが同意する。


「どうするんだい、旦那方?」


 御者の男性がそう訊ねてくる。


「予定通り町の入口に向かってくれ。そこで契約は終了だ」


 アーノルドがそう指示を出す。


「あいよ」


 御者は手綱を操作し、馬を歩かせる。

 やがて、町の入口へと到着した。


「お疲れさん。またよろしく頼む」


 俺はみんなと一緒に馬車を降りる。

 最後に御者の男と挨拶をしておいた。


「こちらこそ。鍛錬がんばってな」


 彼はあいさつを返し、去っていった。

 彼は彼で、この町で一休みした後、また別の町に向かう乗客を探すのだろう。


「さて、行くぞ」


 アーノルドの案内のもと、俺たちはテツザンの町中に向けて歩きだした。


「うわぁ……。中もすごいですね……」


「なんか、エルカの町とは全然違うな……。重厚な建物が多い」


 シルヴィとリンは、物珍しそうにあたりを見回しながら歩いている。


「あそこに見える建物が、冒険者ギルドだな」


 アーノルドがそう言う。

 彼はこの町が初めてではない。

 以前、ここで格闘の鍛錬を積んだことがあると言っていた。


「冒険者ギルドもいいけど。まずは宿を取ろうよ。長旅で少し疲れたよ」


 ユヅキがそう提案してくる。


「ユヅキさんに賛成なのです。ボクも疲れているのです」


 ミナも賛成のようで、他の面々も異論はない様子だ。


「それなら、いい宿屋を教えてやるよ」


 アーノルドの先導のもと、俺たちはさらに歩みを進めていく。


「ここだ。値が張るが、料理はうまいし、部屋も広いぞ。風呂は混浴だが、事前に金を払えば時間制限付きで貸し切りにもできる」


 親切にも、宿の前に料金が書いてある。


「確かに、結構高いですね。ご主人様、大丈夫でしょうか?」


「ああ。これぐらいなら問題ないだろう。みんなもいいよな?」


 パーティとして活動する際には、俺たち『悠久の風』のサイフは同じになる。

 多少高価な宿屋に泊まるのであれば、みんなの同意が必要だ。


「僕は問題ないよ。早くゆっくりしよう」


 ユヅキがそう言ってくれた。

 ミナとリンも異論はないようだ。

 ここに泊まることにしよう。

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