100話 ユヅキとの夜

 シルヴィと深い関係になってから、数日が経過した。

 あれ以降は、無難にエルカ草原で狩りをしている。

 そんな日の夜ーー。


「ご主人様。今日は、わたしは隣の部屋で寝ますね」


「え? 隣の部屋というと、ユヅキの部屋か? なんでまた?」


「……とにかく、今日はお一人でゆっくりとなさっていてください」


「あ、ああ。わかった」


 俺の返事を受けて、シルヴィは出ていってしまった。

 これで、俺は部屋に1人だ。

 もともとは2人用の部屋なので、広く感じる。

 寂しい。


「仕方ない。今日は早めに寝ることにするか」


 俺は残っている雑事を片付けて、寝間着に着替える。

 そして、ベッドに寝転ぶ。


 ややまどろみかけていた頃ーー。

 コンコン。

 ドアがノックされた。


「シルヴィか?」


「ううん。僕だよ。入っていいかな?」


「ユヅキか。もちろん構わないが……」


 こんな夜更けに何の用事だろうか。

 まさか……。


 ガチャリ。

 トビラが開かれ、ユヅキが中に入ってくる。


「やあ。コウタ」


「お、おう。どうかしたか?」


 少し緊張してしまう。

 夜にユヅキと2人きりなのはとてもめずらしいのだ。

 いつもはシルヴィがいるからな。


「ええっとね……。その、今夜はコウタと2人で過ごしたいなって……」


 ユヅキがもじもじとそう言う。

 彼女はボーイッシュな少女だ。

 初めて会ってからしばらく、俺は彼女のことを少年だと勘違いしていたくらいである。


 しかし、こうして見るととても少年には見えないな。

 ボーイッシュな中にも、少女としての確かな可愛らしさがある。

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