99話 朝から、そんなのするはずないでしょ!

 俺とシルヴィが初体験を済ませた翌朝だ。

 ユヅキが部屋に訪ねてきたので、入ってもらった。

 しかし、彼女は何やら顔をしかめている。


「どうした? ユヅキ」


「昨日は楽しんでいたみたいだね、2人とも。分割払いを終えた日にさっそくとは、手が早いなあ……」


 そうか。

 彼女は茶犬族だ。

 嗅覚に秀でている。


 俺とシルヴィがいたしたこの部屋には、まだ匂いが残っていたのだろう。

 俺は気づかなかったが、茶犬族である彼女には丸わかりといったところか。


「ああ。これで、俺とシルヴィは深い仲になったということだ」


「そういうことです! 申し訳ありませんが、宣言通りにわたしがご主人様のご寵愛を一番にいただきました!」


 シルヴィが胸を張る。


「うん。それはいいんだけど……」


「次はユヅキさんの番ですか? ミナさんとリンさんもご興味を持っていらしたようですが、ご主人様との付き合いはユヅキのほうが長いですし……」


「ふむ。ユヅキも、少し興味があるのだったか? さっそくどうだ?」


「ちょっ……! 朝から、そんなのするはずないでしょ! コウタのバカーーーッ!!!」


 バチーン!

 ユヅキの強烈なビンタが俺を襲う。


「ぐはあっ!」


 俺はダメージを受けて倒れ込む。

 そして、ユヅキは肩を怒らせて部屋を出ていった。

 そりゃそうか。 

 いきなり過ぎた。


「わたしは応援していますよ! ご主人様のお力とご威光を、世界に知らしめましょう! これはその一歩です!」


 シルヴィがそう言う。

 なるほど?

 シルヴィは俺を愛するというよりは、崇拝に近い感情を持っているのかもしれない。

 俺の力をフル活用して、成り上がりを狙ってほしいといったところか。


 成り上がりを狙うのであれば、女性を侍らせて最強のハーレムパーティを目指すのが有効だろう。

 もちろん機会があれば男性をメンバーに加えてもいいのだが、俺のモチベーションに大きな差が生じるからな。

 ムリはよくない。


「ああ。よろしく頼む」


 その後、俺とシルヴィは宿屋の食堂に向かった。

 機嫌を悪くしたユヅキが待っており、ともに朝食を食べた。

 しばらくして何とか機嫌を直してくれて、エルカ草原で無難に狩りをした。

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