47話 エルカ迷宮 1階層ボス ゴーレム

 エルカ迷宮の1階層のボスであるゴーレムと戦闘を始めるところだ。


「よし。打ち合わせ通り、俺たちの魔法で先制攻撃するぞ!」


「わかりました!」


「りょうかい!」


 俺、シルヴィ、ユヅキ。

 それぞれが攻撃魔法の詠唱を開始する。


 まずは俺だ。

 ゴーレムがこちらに近づいてきているがーー。


「揺蕩う風の精霊よ。契約によりて我が指示に従え。風の塊を撃ち出し、我が眼前の敵を弾き飛ばせ。エアバースト!」


 ドンッ。

 空気の塊がゴーレムを襲う。

 ゴーレムの体は、もちろん土でできている。

 切断系のウインドカッターではまともにダメージを与えられない。

 それよりも、打撃系のエアバーストのほうが有効だ。


 エアバーストの衝撃を受け、ゴーレムがよろける。

 ダメージだけではなくて、衝撃による動きを阻害する効果にも期待できる。

 このスキにーー。


「凍てつく氷の精霊よ。契約によりて我が指示に従え。氷の弾丸を撃ち出し、我が眼前の敵を撃ち抜け。アイスショット!」


 シルヴィの氷魔法だ。

 彼女はアイシクルスピアも使えるが、あちらは貫通系。

 弾丸系のアイスショットのほうが少し相性がいい。


「母なる土の精霊よ。契約によりて我が指示に従え。土の塊を生み出し、我が眼前に落とせ。クリエイト・ブロック!」


 ドゴン!

 土の塊がゴーレムの頭上に生成され、落下する。

 アイスショットよりも質量が大きい分、ダメージにも期待できるだろう。


「ピピッ。軽微なダメージを確認……。修復します」


 ゴーレムが無機質な声でそう言う。

 ゴーレムの厄介な点は、これである。

 体が土でできているため、軽微なダメージは魔力を用いて回復させてしまうのだ。


 撃破する方法は、大きく3つ。

 1つは、地道にダメージを蓄積させ、魔力切れを狙うこと。

 1つは、回復が追いつかないほどのペースでダメージを次々に与えていくこと。

 もう1つは、一撃で戦闘不能に追い込むことだ。


 今回は、魔力切れによる撃破を試みることになる。

 俺たちのレベルが上がれば、いずれは2つ目の方法でも倒せるようになるだろう。

 MSCにおいても、2つ目の方法でゴーレムを狩れるようになれば初心者卒業だった。

 ちなみに3つ目は、超上級者か廃課金プレイヤーにしかできない方法である。


「エアバースト!」


「アイスショット!」


「クリエイト・ブロック!」


 俺たちはどんどん攻撃魔法を放っていく。

 MSCと同じく、ゴーレムの移動速度は早くないようだ。

 俺のエアバーストで体勢を崩して時間を稼ぎつつ、シルヴィとユヅキで攻撃する。

 近づかれたら、近接攻撃で牽制しつつ、再度距離を取る。


 楽な相手だ。

 無限ループって怖くね?

 この感じだと、当初の俺たち3人でも何とかなったか?

 ……いや。


「コウタ。僕のMPはもう残り少なくなってきたよ」


 ユヅキがそう言う。

 やはり3人では厳しかっただろう。

 MP量の問題があるからだ。

 ゴーレムは移動速度が遅い代わりに、耐久力が高めである。

 俺たち3人の攻撃魔法だけでは、討伐まで至るのは難しい。


「わたしも、半分を切っています」


「わかった。ユヅキは攻撃魔法を控えめにしておけ。俺とシルヴィで、もう少しダメージを稼いでおくぞ」


 ユヅキのMPの評価値は、E+++。

 シルヴィは、D++。

 俺は、C++。

 数値では表記されないので単純な比較はできないものの、やはりMP切れはユヅキからだ。

 

「エアバースト!」


「アイスショット!」


 俺とシルヴィで、ダメージを稼いでいく。

 しばらくして、シルヴィもMP切れ寸前になった。

 俺はもう少しいけるが、念のため温存しておこう。


「よし、ここからは近接で戦っていくぞ!」


「へへっ。やっとあたいの出番か」


「ボクもがんばるのです!」


 リンとミナがそう言う。

 彼女たちは、ここまでのボス戦は眺めていただけだ。

 安全で楽だっただろうが、同時に少し退屈と感じていたかもしれない。


 ここから第2ラウンドの開始だ。

 5人でフルボッコにして、さくっと終わらせることにしよう。

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