21話 急襲! スメリーモンキー!
クレイジーラビットの大群を何とか撃破した。
ユーヤも俺のポーションによって一命をとりとめた。
ポーション代はかなりの出費となったが、それ以外は概ねいい結果になったと言えるだろう。
クレイジーラビットの大群を討伐したことにより、俺のジョブレベルも上がった。
コウタ
種族:人族
ファーストジョブ:風魔法使いレベル11
セカンドジョブ:剣士レベル10
HP:E+++
MP:D+
闘気:E+++
腕力:E++++
脚力:E+
器用:E++
システムスキル:
ジョブ設定
経験値ブースト
アクティブスキル:
ウインドカッター
エアバースト
ラッシュ
パッシブスキル:
腕力強化
風魔法使いがレベル10から11に、剣士がレベル9から10になった。
剣士がレベル10になったことにより、パッシブスキル『腕力強化』を取得した。
名前の通り、腕力を強化するスキルである。
ステータス上の変化はないものの、腕力がひと回り強化されたと考えていい。
感覚的にも、力が強くなっていると感じる。
「さて……。思わぬ出来事もあった。そろそろ帰ることにするか」
俺はそう言う。
クレイジーラビット戦で、みんなそれなりに消耗している。
ユーヤとしても、死の淵から生還してすぐにエルカ樹海を探索する気にもなれないだろう。
「ご主人様。よろしいのですか? お目当ての、中級の魔物はまだ討伐できていませんが」
「それは仕方ない。俺たちは消耗している。中級の魔物には、万全の状態で挑みたい」
クレイジーラビットの猛攻により、ユーヤは大ダメージを負った。
ポーションにより一命はとりとめ、歩ける程度には回復している。
しかし、中級の魔物に挑めるほどではない。
他の者は、ダメージこそさほど負っていないが、迫りくるクレイジーラビットを迎撃するために体力をかなり消耗した。
俺にしたって、MPの消耗が激しい。
この状態では、中級の魔物に挑むのは厳しいだろう。
「すみません、コウタの兄貴。俺が軽率だったばっかりに……」
「僕も、止められなかった……」
ユーヤとユヅキがしょんぼりとした表情でそう言う。
「駆け出しのうちは、こういうこともある。反省して、次に活かせばいい」
俺はそう言う。
MSCにおいて、俺はよくうっかりミスをして死んだものだ。
ゲームではないこの世界で、ミスをして命があっただけ儲けものというものである。
いいこと言うなあ、俺。
俺がしみじみと自分の名言に酔いしれているとき。
くんくん。
シルヴィが、突然鼻を鳴らし始めた。
「……ご主人様。何か、臭いですね……」
俺の名言が、臭いだと……?
いいことを言ったつもりだったのだが。
確かに、少し臭かったかもしれない。
「そ、そうか……? すまなかったな」
しかし、あれほど慕ってくれていたシルヴィがこんなことを言ってくるとは。
これが反抗期というやつであろうか。
俺は悲しい。
しかし、自分の意見をはっきりと言うようになってくれたという意味では、少しの嬉しさも感じる。
「いえ……。そうではなく。物理的に何か臭うのですが……」
シルヴィは白狼族。
人族の俺よりも、鋭い嗅覚を持つ。
「くんくん……。た、確かに臭うね」
「こいつは臭え! ゲロ以下の臭いがプンプンしやがるぜ!」
ユヅキとユーヤがそう言う。
みんなの汗の臭いか?
クレイジーラビット戦で、みんなたくさん汗をかいた。
……と、俺がそんなことを考えているとき。
「ううっ! 臭いがきつくなってきています!」
「こ、これはすごい臭いだ」
シルヴィとユヅキが鼻を押さえて、そう言う。
「コウタの兄貴! 何かが近づいてきますぜ!」
ユーヤがそう警戒の声を上げる。
ガサッ!
ガサガサッ!
木々の葉がざわつく。
俺たちは、顔を上げる。
そこには、巨大なサル型の魔物がいた。
「キキィーー!」
サル型の魔物が威嚇の声をあげる。
うるさい。
そしてそれ以上に、臭い。
「こ、こいつはスメリーモンキーだ!」
事前の打ち合わせでも、名前が挙がっていた魔物だ。
中級に属する。
MSCでも評判だった魔物だ。
もちろん、悪い意味で。
「ううっ! 臭いです!」
「きっつ……。オロロ……」
シルヴィとユヅキがつらそうにしている。
彼女たちは、白狼族と茶犬族。
いずれも嗅覚に優れた種族である。
基本的には長所なのだが、こういう魔物を相手にする際には短所にもなり得る。
「仕方ない……。俺に任せろ」
シルヴィ、ユヅキ、それにユーヤたちは戦力にならないだろう。
かといって、この好機をわざわざ逃す手はない。
スメリーモンキーは、中級の魔物の中でも戦闘能力が低めなのだ。
魔物の生態系について整理しておこう。
魔物同士は、お互いの魔力を求めて日常的に争っている。
魔物の活動にも魔力は消費しており、それを補充するためだ。
負けた魔物はもちろん虚空に消え、魔石が残る。
勝った魔物はそれを摂取し、魔力を充足させるわけだ。
人間や魔獣でいえば、狩った獲物の肉を食べるような感じである。
ただし、人間や魔獣の狩りとは異なる点がある。
消費する魔力よりも摂取する魔力が多いと、少しずつ魔力が蓄積されていき、突然変異の上位種が誕生する場合もあるのだ。
ゴブリンの突然変異種のゴブリンキングが有名である。
中級以上の魔物は多くの魔力を蓄えており、強力な戦闘能力を持つ。
その一方で、その魔力を目当てに他の魔物に狙われやすい。
その対抗手段として、戦闘能力、擬態能力、逃走能力などが優れている傾向がある。
このスメリーモンキーはどうか。
言わずとも察しはつくと思うが、こいつには戦闘能力も擬態能力も逃走能力もさほどない。
あるのは、悪臭だ。
悪臭により敵を遠ざけ、中級の魔物として生きながらえているのである。
逆に言えば、悪臭にさえ耐えればさほどの敵ではない。
俺は1人で、スメリーモンキーと対峙する。
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