第37話 チョンちゃん

 中学生の時に同じクラスになって、なんだかウマが合ったのか、すぐに仲良くなった女の子。

 ・・・・なんでなんだろうな?

 その子はとても成績優秀で、あまり接点は無かったはずなんだけど。

 唯一の接点があるとすれば、「マイケル・J・フォックス好き」というところだったかなぁ?

 彼女もわたしも、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の大ファンだったから。

 ・・・・それでもね。

 彼女は


「英語がペラペラに喋れるようになって、いつかマイケルとお話するんだ!」


 って、目をキラキラと輝かせて話してたんだよね。だからかな。英語の成績だってトップクラスに良かった。

 わたしはただただ


「マイケル、かっこいい~♪」


 なんて言いながら、字幕読めばいいや、なんて思っていて、英語の勉強は疎かにしていたよ(笑)


 でも残念な事に、彼女は転校してしまった。ものすごく、残念だった。

 そんな彼女。

 あだ名は、チョンちゃん。

 由来はなんと、チョン・ドファン。

 なんでも、歴史だか何だかの授業中に、突然『チョン・ドファン』と叫んだんだとか。


 …答えるのだったら分かるけど、叫ぶって?!


 まぁね。

 噂なんて、尾ひれがついてものすごく膨らんで広まっていくものだから、実際はどうだったのかは分からないけれど。

 その話がわたしには物凄くツボで、話を聞いて以来、わたしは彼女を『チョンちゃん』と呼んでいた。

 彼女をそう呼んでいたのは多分、わたしだけ。

 すごく恥ずかしい話だと思うのだけど、彼女はわたしが『チョンちゃん』と呼ぶことを全く嫌がってはいなかった。

 むしろ、喜んでくれていた?


 チョンちゃんとわたしはとても仲がよくて。

 知識豊富な彼女に、わたしは知識では全く歯がたたないのだけど。

 小柄な彼女には唯一、弱点があって。(わたしもそれほど大きな方ではないのだけれども)

 負けそうになるとね。


くすぐって、殺すよ?」


 って、言ってたんだよね。

 チョンちゃんは、キャーキャー言いながら、逃げ回っていたっけ。


 チョンちゃんからの、お別れの際のメッセージには、こう書かれていた。


「遊ちゃんの『くすぐって、殺すよ?』が、頭から離れません(笑)」


 楽しかったね、チョンちゃん。

 今頃、世界に羽ばたいて活躍する人になっているのかな・・・・

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