第4話
警察官に自身の行動言動を注意され、気分が急降下した直後、周囲から異様な目で見られていることに気付いていない摩訶不思議な格好をした成人女性マキは、主観で自分以上に怪しい男を睨み付けていた。
「あなた!一体何をしているんですか!」
男は、妙ちきりんな姿をしながら物凄い剣幕で自分を睨むおかしな女性に、駅舎前でタバコを吸っていたサラリーマンと秘乃目以上の恐怖を感じたのだった。
「な、なにって、てかあなたこそなんなんですか」
常識を欠いた服装で、背後には警察官までいる。さらに、先ほどの彼女と小学生の少年とのやり取りを見ていた男は、余計に女がなんなのかが分からなかった。
なぜそんな人物が、自分と自分の“娘”とのやり取りを睨んでいるのかが分からなかった。
「あなた!もしや誘拐犯ですね!」
挙げ句の果てに誘拐犯呼ばわりをされ、不愉快に思った男が娘の手を引き公園から去ろうとした瞬間。
「てあああああッッッッッ!!」
マキのドロップキックが男の背中に―――決まらなかった。
僅かに距離が足らず、マキはお尻から地面に落下した。
「いったあああああああ!」
呆れを通り越して不憫な目で見られていることなど知るよしもないマキは、目の前の男性に敵意剥き出しの眼を向け続ける。
そんなマキを、彼女の背後にいた警察官が拘束し、手錠をかけた。
「ちょえ、何してるんですか秘乃目さん!手錠をかけるのはあっちですよ!」
「何を言ってるんですか。あの人は僕の同級生です!」
「なら尚更捕えなければいけないじゃないですか!友の過ちを、秘乃目さんは見逃すんですか!」
「何を勘違いしてるのか大方想像はつきます。彼が手を引いてるのは彼の娘です!」
「え、それホントなの?」
「ホントです」
「じゃあ私」
「危うく暴行の容疑で逮捕でしたよ」
「未遂だけどな」
と、秘乃目の同級生が娘を抱き抱えながら突っ込んだ。
「パトロールしに来たのがお前でよかったよ多々良。ありがと」
「いや、多分僕じゃなくても同じ結果だったと思うよ」
そう言って秘乃目は、両腕が不自由になったマキを立たせて、そのまま公園を後にした。
「あの、どこに行くんですか?」
「交番」
「え!交番ですか!逮捕ですか!?」
いやだー!と暴れようとするマキを秘乃目は力で抑える。
「違いますって!手錠の鍵を交番に置き忘れたんで、取りに向かうだけです」
「あ、なんだ、それならいいですよ」
マキは想像した危機を回避できたことが確認できて、ホッと息を吐いた。
「まぁ、少しお話しもしますけど」
「やっぱいやー!」
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