第4話 目星
夕暮れ。
街にちらほらと灯りがつき始める。街中の酒場から賑やかな声が聞こえてくる。
その1つのテーブルに、ロザート達がいた。
「はんにゃ~~~~~~~~~~!!
ほんにゃ~~~~~~~~!!
酒に変わりたまえ~~~~~~~!!」
まるで、水晶玉占いをしているかのように、掌をかざしてコップに入ったオレンジ色の液体に呪文を唱えているロザート。
それを、面白そうに見ているルーファスと、全く興味無さそうにミルクを飲んでいるニーシャ。
ロザートは、最後に「はぁぁあっ!!!」と念を力強く込めて掌をかざすと、ゆっくりとそのオレンジの液体を飲んでみる。
「……………………くっそぉ~~~!!やっぱ何度飲んでもオレンジジュースだァァァァ!!」
「ロザートはさっきからなにやってんの?」
「オレンジジュースをお酒に変えようとしているそうですよ。」
「東の国の呪文っぽいので、確かこんな感じだったんスよ。ていうか、酒場に来て酒はまだダメって………。生殺しもいいとこだって……。」
「仕方ありませんよ。僕達は今から行かなくては行けないところがありますし。」
「最近増えてる行方不明の事っスよね。……というか、やっぱ人身売買じゃないっスか?」
ロザートの言葉に、ルーファスは表情を固くして、頷き顎に手をやる。
「確かに………船長から簡単に説明は聞きましたが、行方不明者が多く感じられます。おそらく、人身売買の線を追った方が得策かと……。」
「じんしんばいばい って、人を売ったりすることだよね?船長が、しゃかい………何とかにもなってるって言ってた!」
二ーシャの曖昧の口上に、ルーファスは優しく微笑む。
「社会問題……ですね。ええ。確かに、この地にも稀に起きますが……だとしてもすぐに見つかるはず……。なのに何故………。」
カランカラン。
と、ドアが開かれると共にベルが鳴る。店員たちの「いらっしゃいませー!」という声と共に現れたのはヴァルサだった。
「船長。お帰りなさい。」
「船長~~~……俺そろそろ酒、飲みたいんスけど………。」
「今からの事が終わってからにしろ。」
ヴァルサが空いてる椅子に腰かける。
「どうでしたか?」
ルーファスがヴァルサに水を注ぎながら聞く。ヴァルサは、腕を組んで静かに息をついた。
「ルーファス、お前の予想通りだ。
ここ最近の行方不明者は全員女。その全員は、人身売買で売られている。それを買っている海賊が…ファニアンだよ。」
「やはりそうでしたか。ファニアン船長は主に女性をターゲットにして、自分の暇つぶしの相手をさせる。飽きたら海に捨てる。……そんな輩たちですからね…彼ならやりかねない。」
ルーファスが、メガネの位置を直しながら納得した。しかし、すぐに眉間に皺を寄せる。
「しかし、ファニアンはそういった隠密が不得意な筈。ここまで行方不明者が出てきたら、既に見つかってるはずですが………。」
「…人身売買は、1組だけで行うんじゃねぇ……。」
ヴァルサの言葉に、ロザートが「へ?」と目を丸くした。
「そりゃあ………買い手と売り手がいねぇと成り立たねぇってのは分かるんスけど………。」
「あ!もしかして、売る人が重要!?」
「ああ。考えられるとしたら、売り手だろうな。そいつがファニアンを操ってバレねぇように人身売買をしているんだ。」
「なるほど。なら、その売り手をどうにかすると考えればいいでしょうか?」
ヴァルサが小さく頷くと、立ち上がった。
「そろそろ行くぞ。動くとしたら、今ぐらいの時間だ。」
「でも船長?取引する場所がわかんねぇと流石に……。」
「既に調べて目星もつけてある。いいから来い。」
ヴァルサの行動は、まるでもう既に犯人をつきとめていると感じてもおかしくは無い様子だった。
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