第三節:さぁ冒険に出てみよう
第42話 その代わり、決して違えない約束を。
という訳で、冒険者登録をして装備も整えて。
昼ご飯も食べ終わったので、ついに冒険へと出発だ。
「アルドー、早くいくのーっ!!」
はしゃぎながら先を行くクイナに、「おいあんまり走ると転ぶぞー?」と言いながら後ろに続く。
念の為に感知の魔法を使ってみたが、どうやら近くに危険は無い。
が、一応警戒する癖はクイナにもつけてほしい。
「クイナ、これから幾つか約束しよう」
「約束ー?」
「そう。まず一つ目、一人で勝手にどっかに行かない。はぐれたら最悪、二度と会えなくなる事もある」
今は脅威は無いみたいだけど、冒険者になればそういう事も往々にしてあるだろう。
「もちろん俺はクイナを守るつもりでいるよ。だけどクイナが勝手に居なくなったら、手が届かないかもしれない。どんなに俺が強くたって、手が届かなかったら間に合わない事もある。あの時みたいにまた助けに行ってやれればいいけど、出来るかどうかは分からない」
言い聞かせる様にそう言えば、多分彼女は少し前までの、一人で何とかしなくちゃならない心細くて寂しくて怖かった時の気持ちを思い出したんだろうと思う。
ギュッと俺の服を握り、耳はペタンと伏せられて尻尾も足の間に挟み込んで、プルプルと震え出した。
ちょっと可哀想な気もする。
だけど取り返しがつかなくなる前に、ちゃんと言っておくべきだと思ったんだ。
生きるための選択肢として『冒険者』を教えるんだから。
だから代わりに約束をする。
「でもクイナ、お前が俺の近くに居て俺に頼ってくれる限り、俺はお前を必ず守るよ」
だから安心してほしい。
そう言って、クイナの頭を耳も巻き込んでモッフモッフと撫でてやる。
実際問題、ここに出る魔物くらいなら俺にとっては痛くも痒くも無いのである。
もちろん慢心はいけないが、その言葉を実現する自信だってそれなりにある。
言質を取られる事を嫌う、王族の血と経験が俺に虚言を言わせない。
大丈夫と示すように目を細めれば、彼女も安堵に目を細め小さくコクリと頷いた。
どうやらもう大丈夫そうだ。
そう判断し俺はクイナと手を強く繋ぎ直して、改めて例の森へと足を向けた。
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