第15話 バカでは女稼業はつとまらぬ!?
おとなしく、一度倒れると起き上がるのが困難なSheep(羊)のような弱い立場にいる被害女性を良い方向に導く羊飼いのような役割が、シーク(Sheepとシークレット)の役割である。
私じゃ、荷が重すぎるのではないだろうか。いや、もはやそんなことを言っている場合ではない。
今、こうしている間でも、苦しんでいる人は存在しているのだ。いちばん怖いのは、それによって、麻薬や売春などこの世の闇に堕ちていくことである。
なんとか転落していく羊のような女性を、食い止めなければならない。
一週間後、たか子が繁華街の裏通りを歩いていた。ここ一、二年でホテル街がやたら増えてきたような気がする。
動物のキャラクターが看板代わりだったり、まるでディズニーランドを彷彿させるような派手な門構えになっている。
もしかして、男性に誘われ、好奇心で腕を引っ張られる女性もいるだろう。
「人はうわべを見るが、神は心を見る」(聖書)という御言葉があるが、うわべだけは、華やかさや無邪気さを演出しているものほど、中身はそれに相反しているものが多い。
昔の地味なつくりの連れ込みホテルがまるで、大人の遊園地であるかのように、錯覚してしまいそうだ。少子化の影響だろうか。
それともセックスを愛とか羞恥心とかの感情抜きに、ビジネスとして割り切ろうとでもしているのだろうか。
ファッションホテルは、いかにもそのときだけの快楽を求めるために存在するようだ。あくまでそれは、男性中心のものでしかない。
女性の立場に立った、妊娠とか不名誉などは、微塵も考えていない。
たか子は、こういう場所に足を踏み入れるのは怖い。一生、別世界でいたい。いや、たか子に限らず、女性なら誰しもそう思うに違いない。
五十歳前後だろうか。小太りで、紺地に派手なペイズリー柄ブラウスに、黒いスカートをはいた女性が、中年男性と腕を組んで歩いている。
こういうのを、いわゆるホテトル嬢というんだろうな。この女性は、北陸弁を話していた。借金でも、抱えているのだろう。ひょっとしてソフト闇金の被害者かもしれない。
女性というのは、誰でも一歩間違えれば、方向性が狂う危険性をはらんでいるのだ。罪を犯すから罪人ではなく、人間にはもともと神に逆らうエゴイズムという大きな罪がある。それを法律を無視したり、また大波に巻き込まれるようにだまされたり、強面に脅されて実行するかしないかだけの違いである。
そうなるには、たいていの場合、男性がらみである場合が多い。
そういえば、以前ドキュメンタリー番組で見たが、女子刑務所に服役している女性は、全員が男がらみ。そのうち半数は離婚者も含めた既婚者であるという。
八割が覚醒剤中毒者であり、余剰人員が5%以上出ているという。
たか子は、ある意味ラッキーな部類の人間かもしれない。いや、世間は大半の人間がそういった部類の人間で成り立っているはずだ。
ある女流作家曰く「バカでは女稼業は務まらぬ」と書いていたが、そのことに感謝する人間はそういないだろう。むしろ、そうでない女性を見下す傾向にある。
しかし、一歩間違えれば、ほんの神一重の差で性被害者になる恐れは誰にでもあるのである。
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