第10話 隼人の勇気ある告白にたか子はプチリスペクト
たか子は、思わずため息をついた。そうか、性犯罪で脅される家族だって存在するわけだ。
しかし、神の子イエスキリストでも、裏切られ迫害されたのである。
もっともイエスキリストの場合は、神が人間の罪の身代わりとして、そのひとり子イエスキリストを十字架に架けられたのであるが。
「俺、実は前のバイト先の飲食店、それでクビになったようなものですよ。姉のことを客に言いふらした奴がいましたね。それ以来、俺は引きこもり状態になりましてね、でも、今は開き直りましたよ。来るなら来いと」
たか子は、隼人の気持ちもわかるような気がした。
そうか、心の傷が悪へと向かわせる場合は多々ある。
しかし、私はそれを食い止めていきたい。
「俺はもう、脅されても平気です。ターちゃんも俺のこと、店に公言してもいいですよ」
「まさかあ、そんな悪質なことしないわよ。
でも、隠してたら余計にそれが、弱みになるケースはあるわね」
「人間、隠しごとはよくないですよ。心身共に悪い。それだったら差別されるのを承知で生きていった方がいいですよ。差別なんてどこへ行っても存在するんだから」
そういえば、日本は外国に比べれば非常に差別は少ない国だというのを聞いたことはある。
歴史上、奴隷制度がなかったのは日本だけである。日本の差別なんて外国に比べれば無きに等しいほど、緩やかなものだという話を読んだことがある。
「一応、あなたの話を信じることにするわ。ところで、あなたのお姉さんって、今どうしてらっしゃるの?」
「今は、心身共に立ち直って会社を経営しているよ。有限会社シークっていうんだ。シークレットと羊のsheepをひっかけた会社名だよ」
えっ、ひょっとしてシークっていえば、あずさの会社?
でもそうだとしたら、すごい偶然いや出会うべき運命?
たか子は思わず尋ねた。
「あなたのお姉さんって、もしかしてあずさっていうんじゃないの?」
隼人はとっさに、驚きの表情を浮かべ
「えっ、どうして知ってるの。もしかして知り合いだったりして」
隼人は、テーブルの上に乗り出し、まじまじとたか子を見つめた。
事実は小説より奇なり。たか子も隼人も、偶然とは一口に片づけられない驚くべき現実に、ここは異次元空間である筈のホストクラブであるという場を忘れ、呆然としていた。
たか子は、少し隼人を尊敬した。
こういう勇気ある人が増えれば、日本も変わるかもしれない。
そう、隠すことが、弱みとなり余計に自分が縛られるということさえある。
「そこで俺は、このホストの給料をそっくり、あずさ姉の経営する有限会社シークに投資してるんだ」
たか子は、シークの会員になろうと決心した。
隼人を助けるためでもあるし、このことにより自分が変わるような気がした。
自分が変わると運命も変わる。
微力でもいいから、性犯罪被害者の一助になれたら、犯罪防止になるのではないだろうか。犯罪は、本人だけでなく家族をも巻き込むので防止していかねばならない。
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