第4話


「フム……。たしかにカルドラ卿の娘と第二王子の婚約発表後から領地経営に問題があることは聞いておる。婚約がカルドラ卿を狂わせたということか」

「いえ、そうではないでしょう。先ほど姪の婚約者だった第四子息が婚約破棄を学園の教室にて大々的に行いました」

「それは……なんと」

「不貞の末に妊娠したにも関わらず、慰謝料と出産祝いに養育費まで請求されたようです。妊娠で腹部がふっくらしているのがわかるということは、妹の婚約以前から不貞が行われてきたということでしょう」


私の前には国王陛下と王妃陛下が並んで座っている。

いや、と言った方が良いだろうか……目が。

十五年前の騒動はまだ記憶に新しい。

今度はあのときにお腹にいた娘が引き起こした事件。

親子二代にわたって引き起こされた騒動に、さすがのお二人も御冠おかんむりだ。


「おい、あのときのグレンの悲しみを忘れたわけじゃねえだろうな」

「忘れてなどおらぬ」


父の言葉に国王陛下の目が怪しく光る。

グレン様、それが息子の同級生との不貞を選んだ男に母と共に捨てられた、父たちの親友。

学園を中退して、心身を病んだ母親と弟妹を支えて無理をして……ある日、病んだ母に殺された。

「あなたを誰にも渡さない」と。

父親に似た息子を愛する夫と見間違えた、哀れな終焉だった。


それで当事者が自身の罪を反省したかと言えば、そうではなかった。

騎士団でそれを聞いた士爵は笑った「これで邪魔者は消えた」と。


「お父様、お聞きしても宜しくて?」

「どうした?」

「マリーナ嬢の家は士爵、つまり一代貴族ですわよね」

「ああ、そうだ。……フム、そういうことか」


父は気付いたようだ、二人に相応しい罰を。

それをその場で話し、まとめ上げた。



士爵位に侯爵家への慰謝料だけでなく、私の後見人となっている公爵家の伯父への慰謝料支払いが国王陛下に認められた。


「アンネローラの第一子を公爵家の跡継ぎとする話になっておる。よって公爵家に対しても婚約破棄の慰謝料を支払え」



ソフィーはその話を聞いて蒼白となり、マリーナはソフィーが公爵家を継げると思い込み、「この子は次期公爵家、宰相になるのよ!」と言ったが……

それが公爵家に対する侮辱にあたり、慰謝料の額がさらに跳ね上がった。


士爵家はなんとか捻出して慰謝料を支払ったが、それはソフィーの爵位を期待してのこと。

誤解をさせたままソフィーとマリーナは書面上の結婚をし、そのまま退学していった。

……結婚式の費用や、学園へ通うための学費が捻出できなくなったことも理由だった。



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