共通点

高原君のお母さんは

本当に高原君とよく似ていた。

目の動きや、話し方。全てが高原君に思えて

仕方なかった。


私にとってそれは苦痛でしかなかったため、ずっとうつむきながら話をしていた。


「どういった理由で今日はいらしたのですか?」

私は素朴な疑問をぶつけた。


「今日は、千遥さんに渡したい物があって来たのです。」

私は顔を上げた。

高原君のお母さんは鞄の中から1つのハンカチを取り出した。





「そ、それって」

「そうです。以前あなたが無くされたハンカチです。」

「ど、どうしてそれを高原君のお母さんが?」

「実は、あなたがバス停でハンカチを落としたのを遼太が拾っていました。ですが、結局いつまで経ってもこれをあなたに渡すことが出来ずにあの世に旅立ってしまったので、

代わりに私が届けに来ました。」


「でも、渡せるチャンスなんていくらでもあったのに、どうして渡してくれなかったのですか?」

私は、つい思った事をそのまま口にしてしまった。


すると、高原君のお母さんは、微笑みながら言った。














「それは、遼太もあなたと同じだったからですよ。」











私にはこの言葉の意味が分からなかった。


高原君のお母さんは続けて言う。

「遼太は、小さな頃から人と話したりするのが苦手で、特に異性の子とは全くと言って良いほど話が出来ませんでした。」

「しかし、千遥さんと出会ってから、遼太は変わりました。少しずつですが、人と話せるようになったのです。」

「でも、遼太にはハンカチを返すほどの勇気が無かった。実はクリスマスイブの日、ハンカチを持って行ってたんですよ。」


それを聞いて私はイルミネーションを見終わった後の彼の言動を思い出した。

あの時、確かに彼は何か渡そうとしていた。


それに気づいた瞬間、私の目から涙が止まらなくなった。泣いたって彼は戻って来ないのは分かっているのに。


私は後悔した。彼は私の気持ちに1番共感して、理解してくれていた。それなのに、私は彼の気持ちを理解出来ていなかった。

彼も私と同じ苦労を抱えていたなんて、気づかなかった。


泣いている私を見て、高原君のお母さんは優しく言う。

「多分、遼太は泣いているあなたを見たくないと思います。だから、どうかこれからは前を向いて、生きていって欲しいのです。

それを伝えるために、私は今日来ました。」


私は声をあげて泣くことしか出来なかった。


それでも、私はしっかり前を向いて伝えた。


「私は、高原君が生きたいと望んだ今を、後悔しないように生きます。」




それを聞いて、高原君のお母さんは笑顔になった。その顔が、高原君と重なった。

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